日本代表“2列目トリオ”を「絶対視するのは危険」 アジア杯へ向け求められる“準備”
一つの武器で押し切れるほどアジア杯は甘くない気が…
個で外せて、感覚的な連係ができる。大迫勇也も含めて4人でゴールへ迫れる。それだけに、ボールを失った時に4人が置き去りにされた形でカウンターアタックを食らいやすい。ハイプレスでカウンターの芽を摘んでしまえばいいのだが、もしそこをかわされれば一気にゴール前まで持っていかれる。つまり、ボランチに前で潰せる守備力が必須なのだ。
組み立てを考えると、一人は柴崎岳や青山敏弘のタイプを使うだろうから、もう一人の負担はかなり大きくなる。三竿健斗、遠藤航、守田英正は3人とも良いプレーを見せているとはいえ、フランス代表のエンゴロ・カンテ並みの働きが求められているのでけっこうハードルは高い。
今のところイケイケで攻撃して点も取れているが、アジアカップでもノックアウトラウンドに入れば簡単な相手ではなくなる。勢いに任せて攻めるだけでは、かつてのポルトガルやコロンビアと同じ穴に落ちる危険がある。状況を読んで、攻撃をコントロールする司令塔の役割も重要になりそうだ。
原口元気を使ってやや守備寄りにシフトする手はあるが、他に有効なオプションを見出せていないのも気になる。大迫、堂安、南野、中島が好調なのは良いのだが、それだけにバックアップとの差が浮き彫りになっている。いわば手の内をさらした状態であり、一つの武器で押し切れるほどアジアカップは甘くない気がするのだ。上手くいっているからこそ、内包している危うさを自覚して準備をしておきたい。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。