日本代表“2列目トリオ”を「絶対視するのは危険」 アジア杯へ向け求められる“準備”
若さへの期待と危うさ、国際舞台で“不発に終わった”ユニットも少なくない
堂安律、南野拓実、中島翔哉。日本代表の2列目トリオは新しい看板になった。かつての岡崎慎司、本田圭佑、香川真司の3人のように、日本の攻撃を牽引している。
若くフレッシュなトリオは個で強く、連係もできる。感覚的に通じるところもあるようで、岡崎、本田、香川のトリオよりコンビネーションが取れている印象さえある。ただし、3人を絶対視するのは危険だと思う。
強化試合の段階で目覚ましい活躍をしながら、タイトルマッチで不発に終わったユニットは少なくない。
例えば、1996年の欧州選手権(EURO)に登場した時のポルトガルは衝撃的だった。マヌエル・ルイ・コスタ、ルイス・フィーゴ、ジョアン・ピント、パウロ・ソウザといった技巧派の若手が台頭し、目くるめくパスワークを披露、勢いに乗っていた。ところが、本大会では大きなインパクトを残せなかった。1991年ワールドユース(現U-20ワールドカップ)を制した黄金世代だったが、結局、ワールドカップ(W杯)でもEUROでも大きな成果は出せず。むしろクリスティアーノ・ロナウドなど次世代のほうがタイトルに近づき、2016年のEUROではついに優勝を果たしている。ルイ・コスタやフィーゴの世代のほうが華やかさはあったのだが、何かが足りなかった。
1990年イタリアW杯に出場したコロンビアも衝撃的だった。カルロス・バルデラマを中心に細かいパスワークで狭小地帯を突破する攻撃はスペクタクル。ペナルティーエリアを離れてビルドアップするGKレネ・イギータの異色ぶりも目立った。しかし、このコロンビアもベスト16まで。
現在の日本が不発に終わったポルトガルやコロンビアと違うのは、得点を量産できているところだ。単に速くて技巧的なだけではなく、ゴールに直結させる破壊力を持っている。だが、それは「危うさ」にもつながる。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。