「流動的4-2-3-1」が生む日本代表の高速アタック アジア杯へ高まる期待と不安材料

対戦相手によって「3-4-3」にも「4-4-2」にも変化する

 さらにベネズエラ戦では新たなシステムも、偶然ではあるが発見できた。試合前日の会見で、ラファエル・ドゥダメル監督は「ベネズエラのストロングポイントは、柔軟な戦術で戦えるのが強み。日本の大きなポイントはパワフルな攻撃力です。試合開始から終わりまで高いインテンシティーを持って、最後まで戦えること」だと話していた。

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 その言葉どおり、ドゥダメル監督は日本をよく研究し対策を講じてきた。ベネズエラは日本の攻撃の突破口である中島と堂安を抑えるのではなく、彼らにパスを供給する南野と柴崎、遠藤を抑えにきた。

 ベネズエラの基本フォーメーションは4-1-4-1だが、日本がボールを保持している時はアンカーのトマス・リンコンが南野を、4枚のMFのうちインサイドハーフのジャンヘル・エレラとフニオル・モレノはそれぞれ柴崎と遠藤をマンマーク。このため両チームのシステムを記者席から俯瞰すると、4-3-3の攻防に見えたのである。

 そしてマイボールになると、DFラインでボールを回しつつ、左MFダルウィン・マチスと左SBジョン・チャンセジョルが攻め上がって攻撃の起点となり、右サイドに展開して日本DF陣を崩しにかかった。

 対する日本は、相手ボールになると中島と堂安の二人が下がり、南野が前線に上がる4-4-2にシフトした。中盤はボックス型で守りを固めつつ、大迫勇也の1トップでは相手DFのパス回しにプレスがかからないため、南野を前に出してプレス要員にするシステムである。試合後の南野は「状況にもよりますが、僕が一つ落ちて(相手の)アンカーに行く時もあれば、(前で残って)2トップになることもあります。そこは臨機応変です」と話していた。

 森保ジャパンの基本システムは4-2-3-1であること。対戦相手によっては3-4-3になるケースもあれば、4-4-2にもなる。このシステムの柔軟性こそ、森保監督の目指す「選手も自然に試合のなかで、状況を見てやっています」というチーム作りの原点を確認できたベネズエラ戦でもあった。

六川 亨

1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。

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