バルサを攻略した驚きの「堅守遅攻」 ベティスの信念が“クライフ哲学”を凌駕した日

意地の張り合いで負けたバルサ、信念の強さで敗れた稀なケースに…

 ハイプレスに対して、意地でもショートパスでつなごうとしたベティス、セオリーどおりロングパスを使ったバルサ。理屈で言えば、ベティスが間違っていてバルサが正解である。しかし、ボール保持にこだわるベティスの執念の前に、バルサは自分たちのリズムをつかみきれず、意地の張り合いで負けていた。

「私はこのフットボールをずっと愛してきた。現役時代、ここ(カンプ・ノウ)でボールに触れられなかった頃からね」(キケ・セティエン監督)

 敗れたバルサのエルネスト・バルベルデ監督は、「違う形で相手のパフォーマンスを打ち消せたのではないかと考えなくてはならない。こうしたことが起こらないようにね」と、話している。

 堅守速攻に敗れる、フィジカルで押し切られる、あるいはレアル・マドリードのような強力なFWを擁する相手と打ち合って敗れる――そういう敗戦は過去にも喫している。しかし、いわば格下の相手にボール保持を削り取られ、自らの哲学に対する信念の強さで負けるケースは稀だろう。

西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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