なでしこジャパンの新星候補・18歳FW宮澤ひなた、高校時代の恩師が語る覚醒の“原点”
高校時代からの変化 「今は、コースが見えたら積極的にシュートを打つ」
柄澤監督が挙げた、もうひとつの「スピードだけではいずれ勝てなくなる」というキーワードも、スピードスターとして鳴らしていた当時の宮澤だけを見ていれば、なかなか出てこない。高校サッカーの対戦相手であれば、ほとんどの場合、ポンと蹴ってからの“ヨーイドン”で、マッチアップする相手を振り切ることができていたからだ。
指揮官はそこに満足していなかった。教え子が遠からず立つステージを想定していたのである。その言葉にある「いずれ」は「なでしこリーグで戦う時」であり、「世界で戦う時」だった。スピードは相対的なものであり、マーカーがなでしこリーグの選手になれば、食らいつかれるようになる。ストライドが大きく、速さもある外国人選手のなかに混じれば「まあまあ、速い」というレベルだ。絶対的な武器にはならない。
また、高校時代の宮澤は、今よりも線が細く、トップスピードに乗ったところでファウルを受けるので、怪我が多かった。怪我と上手く付き合うのもサッカー選手の仕事の一つだが、アクシデントでスピードを失うことは、競技の性質上、往々にしてある。今年8月のU-20女子ワールドカップ(W杯)決勝、ベストとは言えない状態で挙げた先制ゴールは、そうした状況への備えが、あらかじめ用意されていたから生まれたものでもある。
なでしこリーグに入ってからは、高校時代よりも早いタイミングでシュートを打っている。「高校時代は、相手を完全に抜き切ってからシュートをしようとしていましたが、今は、相手が付いてくるのでコースが見えたら、積極的にシュートを打つようにしています」(宮澤)。その結果、開幕から得点力をアピールできるようになった。