“ブレた”柏に忍び寄る3度目の「J2降格危機」 剣が峰のラスト2戦で腹を括れるか
1年前の川崎戦では「意地でもつなげ」と送り出され勝利
ちょうど1年前、柏は同じ川崎のホーム、等々力陸上競技場で天皇杯準々決勝を戦い、1-0で退けている。当時の下平隆弘監督は、こう言って選手たちを送り出したそうだ。
「意地でも(ボールを)つなげ」
つまり昨年の柏は、若い選手たちを中心に川崎に負けない支配力を持つチームを作ろうとしていた。
そして現在の柏も、その潜在能力を秘めている。それは首位を争う広島を3-0で下した第29節の一戦や、川崎戦の3日後に行われた第32節で従来の4バックに戻した鹿島アントラーズ戦の試合内容が証明している。
もちろん現実を目の前にして、勝ち点1でも拾い上げたい心理は理解できる。だが結局は、そんな剣が峰でも腹を括れる監督、あるいはそういう監督を擁すクラブが、常勝や安定に近づいているようにも見える。
第32節、柏に3-2と競り勝った鹿島は、3日前のACL決勝第1戦からスタメンを総入れ替えして臨んだ。それでもピッチに立った11人には、鹿島というクラブの一員として何を肝に銘じ、どんな戦いをするべきなのかが、しっかりと浸透していた。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。