日本代表FW大迫がドイツで陥るジレンマ 指揮官からの信頼と“右サイド起用”の呪縛

試合後の取材エリアで垣間見た人間味溢れる仕草

 試合後、ミックスゾーンで待ち構えていると、大迫はテレビクルーに対して申し訳なさそうに「すみません、今日は勘弁してもらえますか」と言い、ペン記者だけに短く話をしてその場を後にした。その心情を慮れば十分に理解できる。悔しさを包み隠さないなかで、沸々とこみ上げる負の感情を抑え込んでいたようにも見えた。彼の人間味溢れる仕草を垣間見られただけでも、この場に来た価値がある。素直に、そう思った。

 取材を終えてマインツ中央駅に着いたのは夜の9時。勝利に酔うマインツサポーターの喧騒の脇で、ブレーメンのサポーターも柔和に微笑みながらビールを嗜んでいる。今日もマインツ大聖堂の姿は拝めず、鐘の音も聞けなかった。そして今後は、この場所で、この時に、人々の優しさに触れながらも、日本のストライカーが苦悩に喘いだ姿を回顧するかもしれない。

(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)



島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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