日本代表FW大迫がドイツで陥るジレンマ 指揮官からの信頼と“右サイド起用”の呪縛

要求しても届かぬボール、極限まで高まったストレス

 ブレーメンの大迫は4-3-3の右ウイングで先発した。フロリアン・コーフェルト監督は彼を一貫してサイドエリアのポジションで起用していて、対戦相手によっては守備面でも大迫に多大なタスクを与えている。この日もマインツの左サイドバックであるアーロン・マルティンが味方2トップと横並びになるような攻撃的姿勢を見せるため、大迫は試合序盤から彼への監視に明け暮れて自陣でプレーする時間が長くなった。

 試合はホームのマインツが攻勢を奪い、一方のブレーメンは前節レバークーゼン戦で2-6と大敗した影響を如実に感じさせていた。センターフォワードのマックス・クルーゼへ単純な縦パスを蹴り込むだけでは攻撃構築もままならない。味方がボールを持った瞬間に大迫もギアを入れ替えて前線へ駆け出して両手を広げてボールを要求するも、パスが通らない。

 右サイドバックのテオドール・ゲブレ・セラシェとの連係は日を追うごとに高まっていたはずなのに、この日は大迫と彼の呼吸も合わずにプレーが途切れてしまう。そして前半25分、ジャン=フィリップ・マテタにゴールを決められてマインツに先制を許すと、大迫はため息をついたかのように少しだけ肩を落とした。

 ビハインドを負ったブレーメンは得点を目指さねばならない。大迫も守備面の役割より攻撃の責任を色濃く醸して前線へ張り出すようになる。クルーゼとポジションを入れ替えて相手ゴール前でパスを待つ。しかし味方からボールは来ない。時折相手センターバックを背中に従えてポストワークで味方のアタックを促進させても、肝心要のフィニッシュシーンには関われない。この時点で、彼のストレスは極限まで高まっているように見えた。

島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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