日本の“弱点”を克服したU-19代表 技術やセンス以上に光った「プロ集団の経験値」
インドネシアに勝利しU-20W杯出場権を獲得、初戦の失敗を見事に修正
U-19日本代表は、10月28日に行われたU-19アジア選手権の準々決勝で開催国インドネシアを2-0で破り、ベスト4進出を決めるとともに来年のU-20ワールドカップ(W杯)出場権を手にした。6万人超の観衆で埋まる完全アウェー、豪雨にも見舞われるなか、日本は怯まず侮らず勝利している。
初戦の北朝鮮戦では、2-0から一時2-2に追いつかれる拙い試合運びがあった。最終的には5-2で振り切るのだが、2-0となってから2点差のリードを利用するプレーが上手くできていなかった。必要のない難しいプレーを選択してしまい、安易にボールを失ったことで敵に反撃の機会を与えていた。
ところが、次のタイ戦は落ち着いた試合運びを見せ、グループリーグ最後のイラク戦はまったく危なげなし。初戦のハーフタイムの段階で、選手たちは自分たちの試合運びの拙さに対する反省と修正を話し合っていたという。
このチームの軸になっているのは橋岡大樹(浦和レッズ)、齊藤未月(湘南ベルマーレ)、安部裕葵(鹿島アントラーズ/30日にチーム離脱)の3人だ。いずれも、この年代ではフィジカルに優れていて技術もある。何より、Jリーグでのプレー経験が豊富だ。今回のメンバーにはすでにJリーグを経験している選手が何人も含まれている。才能だけでなく、経験値の高いプロ集団だったのは大きい。
前からプレスするのか、それともミドルゾーンに引いて構えるのか――。ゲームの流れをどう読むか、試合運びを的確に行うことができるかの指標となる一つの例だが、Jリーグでも全員にそれができるわけではない。
「現実には、特定の選手が声をかけてリードしている」(U-19日本代表の影山雅永監督)
2006年ドイツW杯に出場した日本代表は、「黄金世代」と呼ばれた才能豊かな選手たちが中心だった。しかし、前からプレスするのか、リトリートするのかで意思統一ができていない時期があった。宮本恒靖、中澤佑二、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦、高原直泰ら錚々たる顔ぶれの大人のチームでもそうだった。ボールテクニックやフィジカル能力と、試合を読む能力は別物なのだ。当時の日本に才能のある選手はいても、経験のある選手は少なかったということだと思う。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。