長谷部に漲る“情熱”と久保が吐露した“悔恨” 思慮深きニュルンベルクで見た「日本人対決」
【欧州蹴球探訪|第9回】歴史あるニュルンベルクと日本人選手の関係性
ドイツは10月28日からサマータイムが終了し、日本との時差がマイナス8時間になった。
バイエルン州北部に位置するニュルンベルクは、かつてのナチス政権が多くの党大会を開催した街で、第二次世界大戦時に空襲に晒されて市街が壊滅的なダメージを負った。あまりにも甚大な被害に街の再建は不可能かと思われたが、終戦後の市民たちの献身的な努力によって街は再興され、今では当時とまったく変わらない中世の街並みが眼前に広がっている。
そのニュルンベルクには、1900年創設の歴史ある1FCニュルンベルクがある。過去に9度ブンデスリーガを制しながら、国内の全クラブで最多となる8度の2部降格を喫した浮き沈みの激しいこのクラブは、近年日本人選手との関係性が深く、2012年から14年に清武弘嗣(現・セレッソ大阪)が在籍したのを皮切りに、13年には金崎夢生(現・サガン鳥栖)、13年から14年にかけては長谷部誠(現・フランクフルト)が在籍し、今シーズンからは久保裕也がベルギー・ジュピラーリーグのヘントからレンタルの形でクラブに在籍している。
ニュルンベルクの伝説的選手の名を冠した「マックス・モーロック・スタジアム」は、ニュルンベルク中央駅からSバーンで約10分の距離にある。その道中には先述したナチスの党大会が開催された「ドク・ツェントルム」があり、その負の歴史の先に現代の者たちが集い熱狂するスタジアムがあるギャップに、様々な思いが交錯する。
現代のドイツ国内の治安は総じて良いが、ここニュルンベルクは特に治安が良いと言われている。なるほど、スタジアムまで向かう道中では地元サポーターが大挙して押し寄せるなかでも、他の各都市のサポーターに比べると彼らは慎ましやかに見える。スタジアム近辺に着いても、辺りは整然としていて、拍子抜けしてしまうほどだ。
もちろんスタジアムの中に入り、試合が始まればニュルンベルクのサポーターはチームを後押しすべく大声援を送る。だが、それでも、この街の住民は思慮深くて、どこか落ち着き払った佇まいがある。
現地時間10月28日のニュルンベルク対フランクフルトの一戦。久保、そして長谷部はともに先発でピッチに立っていた。
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。