【W杯詳細分析・韓国-ロシア】両チームに勝ち点1をもたらした守備力 退屈な試合展開の裏側に隠された「ディフェンスの本質」とは

ゴールを生み出した両チームの采配

 

 ワールドカップのグループリーグ3試合をどのように戦うかについては、様々な思惑がある。ホン・ミョンボ監督からすれば昨年の親善試合を通して相手の力量を評価したうえで何が何でも前半は0-0で凌ぎたかったはずだ。そういう面ではプラン通りだった。

 一方、カペッロ監督からすると本番での韓国の激しさ、それを可能にするフィジカルコンディションの良さに少し驚いたかもしれない。ハーフタイムを経て後半に入ると変化が出始めた。後半に入るとポゼッション率が僅かながらロシアが上がった。しかし疲れのせいか、あるいはリスクを負った攻撃が増えたせいか、両チームともにパスの成功率は79.6%対78%とそれぞれ下げた。

 シュートの数はロシア13本、韓国7本、クロスはロシアが前半と同数11本、韓国が4本。ロシアが前半劣勢で、それが唯一といっていい程のピンチのきっかけとなっていたDualsの勝率は前半の36.6%から48.8%とほぼ五分にまで改善された。セカンドボールが奪われ、その後の展開が抑えられてしまうとロシアの固い守備網を破ることは簡単ではない。

 ホン・ミョンボ監督が最初に切ったカードは後半11分、2012年のアジア最優秀選手イ・グノだ。整備された組織に立ち向かうことができるのは強烈な個の力だと言わんばかりの交代だ。イ・グノは期待通り積極的に攻撃に絡んだ。その姿勢は後半23分強烈なロングシュートをロシアゴールキーパーがハンブルし、ゴールという形で実を結んだ

 しかし、ロシアの失点の3分後、今度はカペッロ監督が動いた。前線のジルコフに代えて予選でチーム最多の5得点を取ったケルジャコフを投入。交代3分後ゴール前のこぼれ球に鋭く反応して同点に追いついた

 前半は双方事前のゲームプラン通り試合が進められた。そしてその中で変えるべきところを変え、継続すべきところを継続するというのが後半のプランだ。ロシアで言えばセカンドボールの対応とシュートの意識を改善し、継続的にサイドからの攻撃を仕掛けた。思わぬ形で失点をしてしまったが、韓国にとってラッキーなこのゴールが生まれたのも、ホン・ミョンボ監督が現状最も得点の確率が高まるための選択肢としてスピードと積極性を持ち合わせたイ・グノという個性を投入したからこそだ。

 

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