初栄冠に男泣きの曺監督、「湘南スタイル」追求の葛藤告白 「僕が折れていたのは…」
1994年の天皇杯以来2度目のタイトルは「ゴールではなく通過点」と強調
曺監督が率いる湘南には、「湘南スタイル」という言葉がついて回る。それは運動量と縦に速いアグレッシブな攻撃という形で理解されやすいが、常にそのプレーを選択していくことが試合状況を優位にしていくとは限らない。一方で、状況に応じたプレーばかりを選択していれば、その分かりやすいスタイルは認知されていかない。J1昇格もJ2降格も経験していくなかでの、そうした葛藤を指揮官はこう表現した。
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「僕が折れていたのは、そのスタイルを出せば良いのかということ。出させないようにされた時に、これがカルチャー作りのために大事だと言った時に説得力がない。そのなかで、勝つためにどうしなければいけないかと言えば、それ以外のレベルを上げないと選手が成長を実感できない。ここ2年はゴール前で簡単に失点しないために必要なことをたくさん練習しましたし、(ボールを)取られて『オイ』と言っている前に逆サイドは戻れよ、と。それは全選手に対してです。それを勝つために選手がやることで、湘南スタイルのレベルが上がると」
積み重ねてきた練習は、後半に攻撃の圧力を高めてきた横浜FMの攻撃をしのぎ切ったことで発揮された。ゴール前にボールを入れられても、ギリギリまで体を張って楽なシュートを打たせない。まさに、勝つために必要なことをやり尽くしたことが、歓喜の瞬間を呼び込んだ。
湘南にとって、ルヴァンカップの優勝は前身のヤマザキナビスコカップから含めて初めてであり、リーグ戦と天皇杯を合わせた国内三大タイトルの獲得も、1994年度の天皇杯以来2回目だった。曺監督は、「これはゴールではなく通過点だ」と強調した。リーグ戦ではJ1残留争いに巻き込まれているものの、その築き上げてきたスタイルは一つ歴史に名を残した。その経験が、これから湘南スタイルをどのように昇華させていくのか。改めて、この先が楽しみになると言えるだけのものを見せつけた決勝戦だったと言えるはずだ。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)