イニエスタが“スーパーマン”になれないJリーグの現実 夢を与える神戸に必要な将来像

ポドルスキは川崎戦で二度のアシストを記録したが、ゴール左からフリーのシュートを外してしまった【写真:Football ZONE web】
ポドルスキは川崎戦で二度のアシストを記録したが、ゴール左からフリーのシュートを外してしまった【写真:Football ZONE web】

次代への投資も推し進める川崎に比べ、若手育成に遅れが…

 時代が進んだ現在のJリーグで、イニエスタやポドルスキにジーコの役割は担えない。ベテランのスター選手を獲得した以上、今、求められるのは即効性だ。ところが現状ではリージョ監督も認める通りに「ほとんど全ての部分で川崎が上回っている」状態である。

 そして川崎は、日本人主体で育成や若い選手の補強も着々と進めているが、神戸は未来を担う日本人の若手育成が立ち遅れている。数年前には安達亮監督(現・カターレ富山監督)の下でMF森岡亮太(現・アンデルレヒト)、DF岩波拓也(現・浦和レッズ)ら若手を抜擢して希望を抱かせたが、流れは途切れてしまった。

 イニエスタやポドルスキは、確かに時折ファンを唸らせるプレーも折り込むが、半面、確実に全盛からは遠のいている。イニエスタはバルセロナ時代の半分程度しかボールに触れられないし、ポドルスキは川崎戦で二度のアシストを記録したが、ゴール左からフリーのシュートを外した。またアビスパ福岡で明確な得点源だったFWウェリントンは、まったく精彩を欠いた。

 しかし、それ以上に気になるのが近未来へのビジョンが見えてこないことだ。いくら神戸でも、欧州で働き盛りのスター選手の獲得は難しいだろう。そして現在のJリーグは、名声を築いたスター選手がスーパーマンのように輝けるレベルではない。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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