イニエスタの体は「質の高いエンジン」 神戸コーチが明かす肉体と日本適応の秘密
「効率良く自分の力を発揮できる体の使い方を考えている」
加えて言うなれば、トレーニングを進めるなかでもう一つ田中が驚かされたのが、イニエスタの修正能力の高さだ。これは、自分の体に対する感覚の鋭さゆえだと田中は言う。
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「例えばトレーニング中に私が『ここをこういう風に動かして』と伝えたとしますよね。それに対して感覚が鈍い選手というのは、何をどう変えれば理想的な動きになるのかが分からず、修正に時間がかかってしまう。でも彼の場合は、どの筋肉をどうコントロールすればいいのか、という頭の中の回路がつながっているからでしょう。こちらが求めることに対して、自分がこういう意識で動かせば、こう動くということを瞬時に理解して、修正できる。それはおそらく……あくまで私の推論ですが、アンドレスはさほど体が大きくないからこそ、できるだけ効率良く自分のポテンシャルを発揮できる体の使い方というものを、常に考えてきたからではないでしょうか」
田中は取材中、イニエスタの体について「最大限にチューンナップされた、質の高いエンジン」だと表現した。エンジン自体は決して大きくはないが、アクセルやコントロールに細かく反応し、そのドライビング技術で最高級の走りを生み出している、と。その言葉を頭に置きながら、ピッチ上でのイニエスタのプレーを思い返してみる。そこには、快適に淀みなく走り続ける彼の姿があった。
[PROFILE]
田中章博/1979年9月4日生まれ、神奈川県出身。高校から大学2年までアメリカンフットボールの選手で、大学在学中に新入生の体作りなども受け持った。卒業後にベンチャー企業で働いた後にトレーナーの道へ。早稲田大や国立スポーツ科学センターなどを経て、2016年からヴィッセル神戸のコンディショニングコーチを務める。
(高村美砂 / Misa Takamura)