2度の大けがで止まった針が再び動き始める 米本を突き動かす日の丸への思い
今季初ゴールで勝利に貢献
ベンチに座り、青いユニホームを着て戦う仲間を見守るしかなかった。「東アジア杯では1度もピッチに立てず、悔しい思いをした」と口にする。それを晴らすかのように、青赤の背番号「7」は味スタのピッチで躍動した。
FC東京のMF米本拓司は16日、ホームG大阪戦で今季初ゴールとなる先制点を決めて2-1の勝利と3連勝に貢献した。
前半15分、右サイドからのクロスに体を投げ出しながら右足で押し込み、今季初ゴールを記録。さらに、後半13分には自陣からドリブルで独走し、決勝ゴールの起点となった。
米本は、ルーキーイヤーの2009年にヤマザ キナビスコ杯ニューヒーロー賞と、史上最年少でのMVPをダブル受賞するなど、その将来に大きな期待を寄せられた一人だった。最高の船出を切ったプロサッカー人生だったが、その後は2度にわたる左膝前十字靱帯(じんたい)損傷で長期間の足踏みを強いられた。
今月上旬に開催された、東アジア杯では1度も出場を許されなかった。苦難の時を経て10年1月以来、約5年ぶりに返り咲いた代表の舞台は、さらなる成長の必要性を知る機会となった。この日、その伸びしろを「少しは示せたと思う」と口にし、こう続けた。
「代表で出られなくても、吸収できることはあった。それを表現していくだけ」
待望の出場はかなわなくとも、決して下を向くことはない。止まっていた米本の日の丸を巡る 物語は、ようやく動き始めた。それを印象付ける姿が、この日の味スタにはあった。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
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