日本代表は「異次元の進化」を遂げるか 明るい未来を予感させた新世代の躍動
五輪に出場した選手が、6年後のW杯で主力となるサイクル
そして世代交代である。これまでの日本は五輪チームの主力が6年後にW杯の主力に切り替わるサイクルが多かった。1996年アタランタ五輪のGK川口能活、DF松田直樹、MF中田英寿らが2002年日韓W杯の主力になった。2006年のドイツW杯では2000年のシドニー五輪の主力であるDF宮本恒靖、MF中村俊輔、FW柳沢敦らだった。そして2010年の南アフリカW杯では2004年のアテネ五輪のDF田中マルクス闘利王とDF駒野友一、MF阿部勇樹、MF今野泰幸、MF松井大輔、FW大久保嘉人らが主力となった。
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南アフリカW杯後、日本代表では2008年北京五輪の主力だったMF本田圭佑、MF香川真司、DF長友佑都、DF吉田麻也、FW岡崎慎司らが一気に台頭し、2014年ブラジルW杯の主力となった。もちろん、そのこと事態は悪いことではない。問題はその先で、彼らを突き上げる選手がいなかったことだ。本田、長友、香川、吉田、岡崎は今夏のロシアW杯まで主力メンバーを務めた。
そこで“谷間”となったのが、2012年ロンドン五輪に出場したメンバーだった。DF酒井宏樹とDF酒井高徳、MF宇佐美貴史とMF山口蛍はロシアW杯メンバーに入ったものの、今も主力として残っているのは酒井宏しかいない。4位になったロンドン五輪のチームで活躍したFW永井謙佑やFW大津祐樹らは、結果的に「谷間の世代」ということで消えていった印象が強い。
そんなサイクルにくさびを打ち込んだのが森保監督であり、2016年リオデジャネイロ五輪世代だった。南野、中島、遠藤、室屋であり、長く続いた北京五輪世代中心のチームに新風を吹き込んだとも言えるだろう。さらに堂安、DF冨安健洋という2020年東京五輪世代も台頭してきている。
ウルグアイ戦の前半途中、右サイドで堂安、酒井宏、遠藤、南野らが狭いスペースでウルグアイのお株を奪うようなショートパスを落ち着いて回した。これまでの日本には見られなかったプレーである。南野と中島はワンタッチで屈強なウルグアイのマーカーを無力化するなど、異次元のプレーを見せた。日本サッカーは新たな世代の出現と、これまで支えてきた選手の「融合」で、違うレベルにステップアップするのではないか。そう期待させるウルグアイ戦でもあった。
(六川亨 / Toru Rokukawa)
六川 亨
1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。