“ポステコグルー革命”が横浜FMで開花 「やりたいサッカーをやり続ける」信念の戦術
個性を輝かせ、戦力の“代謝”にも成功
夏に補強した久保建英、畠中槙之輔、ドゥシャンらが先発した8月22日の天皇杯ラウンド16では、ベガルタ仙台に2-3で敗れたものの、逆に内容では相手を圧倒。ポステコグルー監督が「これ以上求めることができないほどの内容だった」と称賛したが、その認識の正しさを証明するように、9月29日のリーグ第28節では5-2で雪辱した。
来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場圏内で健闘していた北海道コンサドーレ札幌を迎えた10月5日のリーグ第29節でも、2-1ながら「切り替えの早い相手だったが、ボールを保持し完全にゲームをコントロール」(同監督)して、逆に力の差を見せつけた。
もともと能力の高い選手を保有していたが、指揮官の狙いと合致して、アグレッシブに主導権を握り、どこからでも崩せる魅力的なチームに仕上がってきている。中村俊輔(現・ジュビロ磐田)、齋藤などクラブを象徴する選手たちが去っていったが、逆にスピード豊かな仲川輝人、遠藤渓太、独特の左を持つ山中亮輔、天野純らの個性が光り、生え抜きを含めて層も厚くなり、見事に代謝にも成功した。
今年は出遅れが響きACL出場圏内には届かない。だがそれだけに来年のリーグ戦では、主役に躍り出る可能性を秘めている。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。