大迫勇也を突き動かす「W杯の悔しさ」 ドイツで追求する“結果”と代表復帰への覚悟
日本代表復帰へ決意「覚悟、エネルギーが代表には必要」
現状ではエースFWのマックス・クルーゼや左サイドのハルニク、また途中出場したピサーロらが中央から左右へとポジションを移した時が、大迫にとってのチャンスだ。あくまでもチーム戦術の範疇で、それでもタイミングを図りながら、大迫は敵陣中央の決定的なスペースへ入り込んで味方からのパスを待つ。その大半は成就しないが、それでも集中は切らさない。一撃必殺を心に期して、試合中の彼は常に走り続ける。
大迫は2014年1月にJリーグの鹿島アントラーズからブンデスリーガ2部の1860ミュンヘンへ移籍して15試合6得点をマーク。その実績を評価されて翌14-15シーズンからブンデス1部ケルンへ移籍し、4シーズンで108試合15得点15アシストの成績を収めた。現在ブンデスリーガでプレーしている日本人選手の中では破格のキャリアだ。しかし本人は、この数字に納得していないようだ。それは今季新たに在籍しているブレーメンでの所作と言動からも読み取れる。
「観ていても、やっていても見応えのある、躍動感のあるサッカーがこのチームはできると思う。(コーフェルト)監督は、僕が右でプレーすることが好きじゃないと思っているのを分かっているけど、それでも使ってくれるということは信頼されているということ。だから今は個人的な結果とチームの結果を貪欲に求めたい。狙いに行くところは行かないと。とにかく、相手ゴール前へ行く回数を増やしたいですね」
ゴールを求める思いは強くなっている。今夏のロシア・ワールドカップで、日本代表はコロンビア、セネガル、ポーランドとのグループリーグを勝ち抜いて決勝トーナメントに進出するも、ラウンド16でベルギーに敗れて大会を後にした。
期待値の低かったチームが強豪と伍して戦い、躍進する姿に日本国内は熱狂したが、当の選手たちの受け止め方はそれぞれに違っていた。一定の達成感を得た者、激しく消耗して体調を崩した者もいた。そのなかで大迫は焦燥と悔しさと、必ずまたあの舞台へ戻り、今度こそ自らの力を誇示すると誓っていた。それは森保一監督率いる新生日本代表に、初めて招集された時に発した言葉にも示されている。
「ワールドカップの悔しさがある。(今は)その悔しさを活かせると思うし、それくらいの覚悟、エネルギーというのかな。それが代表には必要だから」
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。