“ステップアップ移籍”の先駆者、元日本代表MF松井大輔が考える海外挑戦の意義

ヨーロッパで計11年、8クラブを渡り歩いた豊富な欧州経験を誇る【写真:Getty Images】
ヨーロッパで計11年、8クラブを渡り歩いた豊富な欧州経験を誇る【写真:Getty Images】

「いろいろな経験があっての今。自分が通ってきた道に悔いはない」

 日本人選手が海外でプレーすることが珍しくなくなった昨今、MF本田圭佑(メルボルン・ビクトリー)は「とりあえず日本を出ろ」と恵まれた環境を捨てて何の保証もない海外へ飛び出すことの重要性を説いてきた。では、“ステップアップ移籍”の先駆者である松井は、様々な経験を踏まえてどのような見解を持っているのか。

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「日本でプレーしていても、欧州5大リーグのクラブが見ていることはまずないのが現実。行かなければ分からない醍醐味もあるので、早めに行ってアピールするのが理想だと思います。ただし、試合に出られるチーム、というのが条件です。選手である以上、やはり試合に出場しないと意味がない。監督が起用してくれる可能性のあるチームを選びながら、そこで活躍すること。そうすればヨーロッパのいろいろなチームに移籍できるだろうし、自分の価値も上げられますから。外国籍選手は、練習が終わった後のシャワールームでも、移籍の話題ばかりでした。どこのチームへ、いくらで、という話しかしていなかったですね」

 フランス、ロシア、ブルガリア、ポーランドと渡り歩き、2018年1月に横浜FCへの完全移籍で日本復帰を果たした松井。計11年、8クラブでプレーした自身の欧州挑戦を回顧し、「もう少しヨーロッパにいたかった思いはありますけど」と明かし、言葉を続ける。

「いろいろな悔しい思いもしました。フランスからポルトガルに行けなかった2010年は、印象に残っています。(南アフリカ)ワールドカップ終わりで調子も良くて、(スポルティングは)ポルトガルの中でも上位のチームだったので、チャンピオンズリーグに出場できるチームに行けるチャンスは僕にとって魅力でした。ポルトガルで1年くらいやれたらなという気持ちはありましたけど、その経験があったからこそ今があると思うし、それが自分の通ってきた道。悔いはありません」

 サッカーを楽しみたい――。松井は37歳となった今も自らの生き様を貫き、挑戦を続ける。

[PROFILE]
松井大輔(まつい・だいすけ)/1981年5月11日生まれ、京都府出身。鹿児島実業高時代からテクニシャンとして知られ、卒業後に京都パープルサンガ(現京都サンガF.C.)に加入。アテネ五輪出場直後の2004年夏にフランスのル・マン(当時2部)に移籍し、初年度から主力として1部昇格に貢献した。08年からはサンテティエンヌ、グルノーブルとフランスで戦い、その後はロシア、ブルガリア、ポーランドと各国1部リーグで奮闘。14年にジュビロ磐田と契約して10年ぶりのJリーグ復帰を果たし、今年1月から横浜FCでプレーする。日本代表としても南アフリカ・ワールドカップに出場するなど通算31試合出場1得点。8月に海外で計11年、8クラブを渡り歩いた経験を凝縮した著書「日本人が海外で成功する方法」(角川書店)を上梓した。

(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)



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