ACL日韓対決に見る「技術vs体力」の構図 鹿島が“崖っぷち”から生還できた要因とは?
劇的な逆転勝利を導いた選手間の意思統一
これをキックオフからやっていれば良かったのではないかという疑問は出てくるわけだが、そこはなかなか難しいところなのだ。
相手のハイプレスをパスワークでいなし続ければ、相手は前半から下がっていただろう。ただ、まだ“ガソリン満タン”の相手をパスで外し続けることに失敗すれば、大きなピンチにつながるリスクがある。
実際、立ち上がりの鹿島はそうなっていた。割り切ってロングボールを使い、ハイプレスを回避して嵐が過ぎるのを待つという手もある。ただ、それはそれで相手の土俵に乗ることになってしまう。もちろん、デュエルに自信があるなら受けて立つのも悪くない。たぶん正解はない。その時の敵味方の力関係に左右される。
サッカーのルールが定まった時から、「体力vs技術」の対立は始まっていた。イングランドとスコットランドが最初の国際試合を行って以来、ずっと続いているし、これからも続くだろう。
あらかじめこうと決めることもできるが、やはり始まってみなければ分からないところも多々ある。その点では2失点後とはいえ、鹿島が選手間でコミュニケーションをとって意思統一できたのは、やはり大きかったのかもしれない。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。