スーパースターと“生きていく”意味 C・ロナウドがユベントスに突きつけた難題

ロナウドを上下動で疲弊させるのはナンセンス

 ロナウドは守備の時には攻め残る。やろうと思えば守備もやれないことはないが、レアルで年間50点も取ったストライカーを、上下動で疲弊させるのはナンセンスだろう。

 1トップではないので、ロナウドともう一人は前残りすることになる。すると残りの8人は、必ず守備ブロック要員になっていないと守備が持たない。セリエAの格下相手なら話は別だが、UEFAチャンピオンズリーグ優勝を狙うなら強固な守備は必要だ。ディバラ、クアドラード、ドウグラス・コスタの全員を守備ブロックに組み込むのは困難だろう。つまりロナウド一人のために、ユベントスはいくつかの変更を余儀なくされる。もちろん、そこまでしてもらうのだからロナウドもそれだけの価値を示さなければならない。

 リオネル・メッシを擁するバルセロナも、ずっと同じ課題を抱えてきた。ただ、何をどうしても最後はメッシ頼みに帰結し、巨大な才能の周囲は枯れていく。だから無駄だと分かっていても、時々組み替えてリフレッシュしなければならない。今季は戦術的に3トップの一人としてスタートしているが、それもどこまで続くかは分からない。おしながきには「トロ」と書いてあるが、一人だけ「大トロ」なのは間違いないからだ。

 ロナウドもメッシも、いつまでも25歳ではない。徐々に老いていくスーパースターとクラブは、どう向き合っていくのだろうか。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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