報道陣に「元気なくないですか?」 修羅場をくぐり抜けた内田が4年間で身につけたモノ

「変な勘違いをしてはいけないのは、引くのが悪い、みたいなこと。要は(戦術の)使い分けですね。試合の中で引く時間というのは絶対あるし、それと前からいくやり方をうまく使い分けられれば。それを選手で考えて表現できるというのが、そのチームの力なんだと思う。前からいって、後ろがついてこないシーンもあった。そこら辺がしっかりしてくれば、はまる可能性は高くなる。相手がいることなんで、ガチンコ勝負じゃなくて受け流すところがあってもいいと思う」

 高温多湿のレシフェで迎えた初戦、ザックジャパンはちぐはぐだった。特に、チームコンセプトである前線からのプレスに連動性を欠いた。本田圭佑は相手DFに果敢にプレッシャーをかけたが、相手のパス回しを独力では寸断できず、いたずらに体力を消耗する羽目になった。試合終盤、相手エースFWディディエ•ドログバが投入されると、吉田麻也、森重真人らDF陣は競り合うことも難しく、最終ラインはずるずると後退させられてしまった。

 アルベルト•ザッケローニ監督は、コートジボワール戦の試合後、自らの采配がさえず、混乱を招いたことを認めている。戦況を読み、適切な戦術を瞬時に判断することも一流選手に必要な素質と言える。日本代表で長らく司令塔を務めた中村俊輔(横浜M)は“ピッチ上の監督”と呼ばれるほど戦況理解度が高かった。

 その中村をひそかに尊敬しているという内田は、戦術面だけではなく、メンタル面もすでに切り替えはできている。

「ここに合わせてくるというのはずっと前から分かっていた。コンディションはスタッフの人たちがやってくれるし、あとはメンタルの部分。メンタルは自分でやっていくしかない。僕自身、そこは不得意だとは思ってないんで。ダービーもやってきたし、チャンピオンズリーグもやってきたんで」

 2010年南アフリカW杯で出場機会なしに終わった内田は、ドイツブンデスリーガの名門で4年間戦い続けてきた。多くの修羅場をくぐり抜けてきたのだ。ここで動じるメンタルではない。

「皆さん、元気なくないすか? 明るく書いてくださいよ」

 こう話すと笑い声が起きた。初戦敗北で沈鬱(ちんうつ)な雰囲気のメディアをいじるほどの心の余裕がいまの内田にはある。それはザックジャパンにとっては、心強いことだろう

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

 

 ※ワールドカップ期間中、サッカーマガジンゾーンウェブが記事内で扱うシーンやデータの一部はFIFAワールドカップ?公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』で確認できます。
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