次世代なでしこの弱点解消策になるか? 天才がサイドバックに転向した理由
「いいサイドバックは日本になかなかいない」
なでしこジャパンの佐々木則夫監督は3位で終わった東アジアカップ中国大会において、右サイドバックで3試合全てで先発出場させたMF京川舞(INAC)について、7月の女子ワールドカップカナダ大会で準優勝メンバーとなったDF有吉佐織(日テレ)に続く、アタッカーからのコンバート成功に期待している。
INACではアタッカーとして活躍する京川だが、今大会はサイドバックとして佐々木監督はチャレンジを要求した。
「以前から、U-23代表ではサイドバックで使ってくれないかという要望があった。非常にスタミナがあり、思い切りがあり、1対1で体の無理が効く。気も強く体も強い。サイドバックは、なかなか日本にはいいプレーヤーがいない。そういう意味で彼女にはこのチャンスに話をして、やってもらったということ」
2-0で勝利した中国戦後の記者会見で指揮官はこう語った。なでしこジャパンの右サイドは近賀ゆかり(INAC)が長らく定位置としてきた。カナダ大会で有吉が台頭し、巧みなドリブルを武器に大会MVP候補にも選出されるに至った。その有吉も2010年の日テレ加入までFWで、本職のサイドバックではなかった。
なでしこにおけるサイドバックの人材難を解消するため、「天才少女」とも呼ばれた京川に、有吉と同じ道を歩む選択肢を佐々木監督は提示した。才能豊かな21才のアタッカーに新境地を開くことを依頼したという。
「本人も前向きにやってくれている。次に繋がってくれればなと思う」と指揮官は語った。開幕戦の北朝鮮戦では不慣れなポジションからミスも散見し、韓国戦では試合終了間際の不用意なファウルで相手の決勝ゴールになったFKを与え、試合終了後には泣き崩れた。それでも、最終戦になった中国戦では持ち前の攻撃参加でチャンスを演出するなど輝きも放った。
岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)ら前線のタレントに比べて、サイドバックは人手不足という次世代なでしこ。サイドバックの救世主として佐々木監督は京川に大きな期待を寄せている。
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images