欧州で「新型4-3-3」が流行の兆し リバプールの躍進導く“MFの外を使わせない”守備
守備リスクがないまま、“前残り”する3トップの威力を発揮
そこより手前ならウイングが少し下がれば守備ができる。そこより深い場所にはサイドバックがいる。外を切っているので内側へはパスされてしまうが、そこにはジェームズ・ミルナー、ジョーダン・ヘンダーソン、ナビ・ケイタ(あるいはジョルジニオ・ワイナルドゥム)という強力なボールハンターが待ち構えている。
MFの外を使わせない――ほぼこれだけで3トップは下がらずに守備の役割を果たしていて、相手DFを釘付けにできる。自分たちのポジションを大きく崩さずに、従来よりも高い位置で守備ブロックをセットしている。
4-3-3の3ラインで守備ができれば、強力な3人が前残りしているのでボールを奪った後にカウンターの威力を発揮しやすい。攻撃の鬼だったゼーマン監督の3人前残り作戦は、肉を切らせて骨を断つような戦法だったが、リバプールは守備のリスクがないままで3トップの攻撃力も使えている。
他の3トップのチームも、例えばバルセロナはリバプール方式の守備を採り入れているが、MFのボール奪取力には少し差がある。リバプールとはスタイルが違うのでこれは当然なのだが、今のところ一番上手く4-3-3を使えているのはリバプールではないかと思う。
4-3-3の復活は、アトレチコ・マドリードが2トップを守備ブロックに組み込んだことで1トップ全盛期に4-4-2を復活させたのと似ている。守備にひと工夫入れることで、攻撃に人数をかけられるようになっている。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。