なでしこの“女マラドーナ”が決勝弾 スーパーサブ横山が大会初勝利に導く

U-17女子W杯で伝説のゴール

 冷静に右足を振り抜いてゴールを射抜いた。8日の東アジアカップ最終戦の中国戦で、0-0で迎えた後半38分に投入された横山久美(長野)が、同43分に決勝ゴール。チームを大会未勝利の危機から救った。
 スーパーサブとして臨んだ今大会だった。佐々木則夫監督が「チャレンジなでしこ」と命名し、多くのメンバーにチャンスが与えられた中で、初戦の北朝鮮戦と続く韓国戦はベンチスタート。後半の勝負どころで得点を奪いにいく一手として投入されてきた。この日も、同じく後半38分からの出場になった。投入直後に京川舞(INAC)のスルーパスに抜け出したチャンスこそ相手GKの素早い飛び出しの前に阻まれたが、続く43分に歓喜の瞬間が待っていた。
 中島依美(INAC)のスルーパスに反応すると、今度は冷静に相手GKの位置を見極めてシュート。ゴールネットを揺らし、貴重な先制点を挙げた。その後、杉田亜未(伊賀)の追加点もあり、なでしこジャパンは嬉しい大会初勝利。東アジアのライバルたちを相手に大会未勝利の危機に瀕していたチームを、意地の勝利に導いた。
 年代別代表のころから注目されてきた才能だった。今大会も共に戦ったMF猶本光やFW田中美南などと出場した2010年のU-17女子ワールドカップでは、準決勝の北朝鮮戦で伝説に残るゴールを決めた。
 左サイドでボールを受けた横山は、相手に囲まれながらもドリブルを開始すると、1人、2人とかわしていく。一度かわした相手に追いつかれても再度ドリブルでかわし、のべ“6人抜き”を果たして決勝ゴール。世界にその名を轟かせ、“女マラドーナ”の異名をとった。このゴールは世界中のサッカーファンの間で評判になり、リオネル・メッシやアリエン・ロッベンのゴールと並び、同年のFIFA最優秀ゴール賞(プスカシュ賞)の最終候補にノミネートされたほどだ。
 チームは準優勝を果たし、横山は大会最優秀選手ランキングで2位になりシルバーボール賞を受賞。順調に成長を続けると、12年に岡山湯郷に加入。同年のU-20女子W杯でもヤングなでしこの主力として活躍。世界3位の原動力になった。
 14年にはより多くの出場機会を求め、2部にあたるチャレンジリーグのAC長野パルセイロへ移籍。21試合で30ゴールという爆発的な得点力で得点王に輝いた。今季もここまで18試合で22得点を挙げ、チャレンジリーグ勢から唯一のなでしこジャパン入りを果たしていた。
 試合後、「若い選手のレベルが非常に上がってきたので、それを加味しながら、これから五輪予選に向けて相対的に準備をしていく良い材料にしていきたい」と若手選手を多く起用した佐々木監督は語った。この日のゴールによって“女マラドーナ”はその決定力を指揮官に大きくアピールしたはずだ。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
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