逆襲の赤い悪魔 プレミアリーグ2015-16【マンU編】
指揮官の哲学
昨季はまさ に試行錯誤のシーズンだった。就任1年目のファン・ハール監督はチームに3バックシステムを導入した。リーグ開幕戦では無名に近かった下部組織出身のDFタイラー・ブラケットを先発に抜てきし、ブラケット同様レフティーのDFマルコス・ロホ獲得にこだわっていたことからも分かるように、オランダ人指揮官は「左CBには左利き」という自身の明確な哲学を持っていた。それだけでなく、司令塔のMFマイケル・キャリックが負傷で起用できず、適任者不在と見るやいなや、左サイドバックが本職のブリントを中盤の一角で起用するなど、チームを自分の色へと染め上げようとしていた。
しかし、負傷者が続出し、戦術変更を余儀なくされてしまう。特に守備陣はまさに野戦病院と化した。3バックを諦め、4 バックへと布陣を変更。中盤センターへのコンバートにも難なく対応した主将のルーニーや、デ・ヘアのスーパーセーブに頼り切りの状態が続いたとはいえ、最終的には4位でシーズンを終えた。就任1年目のシーズンとしては最低限とも言える欧州チャンピオンズリーグ(CL)の出場権は確保した。
結果的にはシステム変更が功を奏した一面もある。エバートンから加入後になかなか実力を発揮できていなかった長身MFマルアン・フェライニは4-3-3のインサイドMFで起用されると徐々に存在感を発揮。アフロヘアが印象的なベルギー代表はその空中戦の強さと、ポストプレーでチームに貢献。出場機会に恵まれず、くすぶっていた新加入のスペイン代表MFアンデル・エレーラも、フェライニにボールが集まる中 、空いたスペースで持ち前のテクニックと発揮し、一躍レギュラー争いに名乗りを上げた。
とはいえ、フェライニやエレーラも同ポジションにライバルが多く加入したことで、定位置が保証されているわけではない。特にフェライニは、昨季最終節のハル戦で危険行為によって一発退場。そのため、開幕から3試合出場停止処分を受けている。ファン・ハール監督もプレシーズンではその点を考慮し、フェライニよりも他の選手を優先的に起用していることを明かしている。高さとパワーを備えるフェライニは、ユナイテッドの中でも唯一無二の存在なだけに、復帰後の起用には注目が集まりそうだ。