ザックJAPANに問われる真価 ベンチのポジティブリーダー青山敏弘という存在
ワールドカップ(W杯)の最終メンバーに選出された日本代表23人はいま、初戦コートジボワール戦で逆転負けし、最大の苦境に立たされている。だが、その影で試合の出場機会を与えられず、ベンチで戦況を見つめるしかない控え選手はさらに深い葛藤の時間を過ごしている。
2006年ドイツW杯の日本代表では、当時のジーコ監督が先発メンバーを固定した副作用で、先発組と控え組の温度差が生じ、和が乱れてしまったことは有名なエピソードだ。
しかし、ザックジャパンのベンチにはポジティブリーダーが鎮座している。
「初戦を終えて、うまくいかないときにどうするか。この判断でうまく回るように解決策を考えないと、コートジボワール戦のように後手、後手に回ってしまう」
16日(日本時間17日)の練習後、こう語っていたMF青山敏弘(広島)がそうだ。14日のコートジボワール戦では出番のなかった青山だが、W杯開幕まで2日と迫った最終調整試合ザンビア戦で才能の片鱗を見せた。試合終了間際に途中出場すると、最初のプレーで前線の大久保嘉人(川崎)に絶妙なロングパスを通した。それを巧みなトラップから決勝弾に昇華した大久保も「凄いパスがきた」と舌を巻いた。
彼はピッチ上ではパサーだが、ベンチでは出番のなかなか訪れない若手のメンタル面を支えているのだという。例えば5月27日の埼玉スタジアムで行われたキプロス戦のことだった。この試合では柿谷曜一郎(C大阪)が1トップで先発したが、途中出場で呼ばれたのはザックジャパンの最終メンバーにサプライズ選出された大久保だった。
しかも、大久保は攻撃的MFでの起用が予想されていたが、指揮官は1トップでの投入を指示した。これまで柿谷と1トップの座を争ってきたベンチの大迫勇也(1860ミュンヘン)はこの瞬間、青ざめていた。その隣から真っ先に声が掛かった。
「サコ、大丈夫だって!」
青山はそう言って、コートジボワール戦で1トップで先発することになる大迫をベンチですかさずフォローしていた。ベンチで出場機会のない若手に積極的に声をかけ、試合後などにランニングに連れ出すなど、積極的なアプローチを続けているのだ。
「オレは代表に呼ばれて試合に出るまで2年以上かかったんだから」
自らの体験談からこんな言葉をかけるという。