元銀行員からの転身 今季ナポリ指揮官に就任したセリエA注目の戦術家
ミランCEOも認めた戦術家
そうした戦いぶりに 、ミランのガッリアーニCEOも「リーグで最も組織されたチーム。イタリアで一番いいサッカーをしている」と語り、インザーギ前監督の後任候補として名前が挙がったほどである。
下部組織から育ったDFダニエレ・ルガーニは、サッリの指導の下で昨季にフル代表に招集されるまでに力をつけた。もちろん、そんな存在をビッグクラブがほっておくわけもなく、昨季開幕前にはユベントスに保有権を買い取られ、期限付き移籍の形でプレーした。そして、契約上は“復帰”という形で今季からユベントスでプレーする。残留を争うチームの中心的DFが、昨季を通して一度も警告や退場になっていないということも、サッリの作り上げた守備組織がいかに洗練されたものであるかを示すエピソードの一つだ。
そして今季、イタリアでも名門として名高いナポリの監督に就任した。指揮下に置くのは、FWゴンサロ・イグアインやMFマレク・ハムシクなど、世界的にも名前の通った選手たちだ。今までの“無名”選手たちの集団とはわけが違う。熱狂的なことで知られるナポリのサポーターから受けるプレッシャーも、経験のないものだろう。しかし同時に、サッリの作り上げる組織サッカーが個人能力の高い選手たちが集まるナポリでフィットすれば、エンポリ時代から1ランク上のサッカーを見せてくれるのではないかという期待も大きい。
プロヴィンチア(地方の小クラブ)で革新的なサッカーで実績を残し、ビッグクラブへと羽ばたいていくのはイタリアの特徴だ。「ミラクル・キエーボ」を作り上げたルイジ ・デル・ネーリ監督や、シエナで4-2-4システムで一世を風靡(ふうび)してユベントスへ渡り、イタリア代表監督にまで上り詰めたアントニオ・コンテもこのパターンだ。果たしてサッリはビッグクラブ1年目でどのような結果を残すことができるのか。間違いなく今季のセリエ注目ポイントの1つである。
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images