シチリアの火山、即断即決のパレルモの名物会長 13年で30人の監督交代劇
他に例を見ない監督人事
そして、今後も他に例を見ないであろう監督人事が起こったのが12-13シーズンだ。ジュゼッペ・サンニーノ監督が3節で解任され、後任にはインテルを率いた実績もあるジャン・ピエトロ・ガスペッリーニが招聘(しょうへい)された。しかし、23節をもって解任。すると、パルマなどを率いたアルベルト・マレザーニを呼び寄せた。しかし、ザンパリーニ会長の電光石火ぶりは止まらない。3試合でマレザーニを解任すると、ガスペッリーニを再招聘。それも2試合で解任し、最終的にはサンニーノが戻ってくるという目ま ぐるしい人事が展開された。この間、わずかに1カ月。そして1年間でパレルモを率いたのは、のべ5人。それも、見事なまでに中央で折り返す形で人名が並ぶ。もはや「しんぶんし」。上から読んでも下から読んでも同じである。このような珍事は世界中を見渡しても、そうそうお目には掛かれない。
そして、ザンパリーニ会長と最も関係が深いのが、フランチェスコ・グイドリン監督だ。近年ではウディネーゼなどで名をはせたイタリア屈指の戦術家である。しかし、彼もまたザンパリーニの電光石火の決断劇に翻弄(ほんろう)され続けた。初めてパレルモのベンチに座ったのは、03-04シーズンの26節。そして、翌シーズンは1シーズン全体を指揮した。ザンパリーニ政権下でシーズン中に監督交代が起こらな かったのは、この時が初めてのことである。シーズン後にチームを離れたが、06-07シーズンの開幕時にパレルモへ帰還。しかし、あえなくシーズン途中で解任された。それでも、その後に再招聘されてシーズン2度目の監督就任を果たした。またもシーズン後にパレルモを後にしているが、翌シーズンの14節からまた呼び戻された。実に4回に渡って招聘されている。
普通であれば、強い信頼を示すエピソードに聞こえるが、ザンパリーニ会長が絡んでいると“便利屋”扱いされているように見えるのが悲しいところだ。