【W杯詳細分析・アルゼンチン-ボスニア・ヘルツェゴビナ】後半から格段に機能し始めたメッシ その裏にあるアルゼンチンの戦術変更とは

個を輝かせたアルゼンチン監督の緻密な分析と采配

 後半に向けてアレハンドロ・サベージャ監督が動いた。

 メッシひとりに集中する状況を変えるべく後半開始から2人のメンバーを変えた。1人目はメッシを活かすための司令塔フェルナンド・ガゴ、そしてもう1人はメッシに集中した守備を分散させるためにゴンサロ・イグアインを投入し、システムを4-3-3に変更した。

アルボス後半

  後半のイラストを見て分かるように右に偏っていた攻撃は中央にその起点を移し、左の攻撃さえもその比率を下げた。ボスニアの大柄で屈強なディフェンス陣にサイドからクロスを放り込んでもあまり効果的ではない。実際この日のアルゼンチンのクロスは8本でボスニア19本の半分以下だった。

 イグアイン、アグエロ、そしてメッシが前に揃ったことによりメッシが輝きを取り戻した。前半のパスに対して後半は約6割増の43本のパスを受け、パス成功率も70%から86%と大きく改善した。後半、メッシが受けたパスの60%弱にあたる25本はガゴ(18本)とイグアイン(7本)からだ。

 前半から一緒にプレーしたアグエロにこの2人が加わったことにより、ボスニアはメッシに対して常に複数のディフェンダーを割くことは難しくなってしまった。さらに中盤の枚数を増やすことによってアルゼンチンのDualsの数値も26勝16敗(勝率62%)にまで改善された。

 後半20分のメッシらしいゴールを見てホッとしたファンも多いと思う。このゴールはメッシのワールドカップでの呪縛が解けたといった迷信的なものでもなければ、フィジカルコンディションが上がってきたという個人的なことだけでもない。前半の試合運びから状況を正確に判断し、戦術的な修正を加えた結果だ。

 このワールドカップでは個の選手の輝きが目立つ。しかしピッチの上の個を輝かせるために指揮官の緻密な分析と采配があることを覚えておこう。

analyzed by ZONE World Cup Analyzing Team

データ提供元:opta

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

 ※ワールドカップ期間中、サッカーマガジンゾーンウェブが記事内で扱うシーンやデータの一部はFIFAワールドカップ?公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』で確認できます。
詳しくは、「LEGENDS STADIUM 2014 – FIFAワールドカップ公式動画」まで

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