近くて遠い背中 ロジャースが目指す恩師モウリーニョ超え
薫陶を受けた恩師はライバルに
スウォンジーで評価を高め、2012年にはついにイングランド屈指の名門リバプールがロジャース監督の招聘(しょうへい)を決めた。クラブOBでレジェンドの一人でもあるケニー・ダルグリッシュ氏の後任ということもあり、当初は懐疑的な見方をされることもあった。しかし、ロジャース監督は就任2年目 の2013-14シーズンに、マンチェスター・シティとの壮絶な優勝争いを繰り広げるなど、リバプールでも、その地位を確かなものへとしていった。ルイス・スアレス(現バルセロナ)、ダニエル・スタリッジを中心とした攻撃陣の爆発に助けられた部分は大きいとはいえ、1990年以来のリーグタイトルにあと一歩と迫った手腕は評価に値するだろう。
リバプールが優勝を争っていた、そのシーズンで、ロジャース監督は師と仰ぐモウリーニョ監督に牙をむく一面を見せた。
2014年4月27日、チェルシーのホーム・スタンフォード・ブリッジで迎えたプレミアリーグ第36節。これに勝てば優勝が大きく近づいたこの一戦で、リバプールはチェルシーに0-2と完敗。レッズの主将を務めていたMFジェラード(現LAギャラ クシー)の“スリップ”の場面が有名なこの試合の終了後、ロジャース監督は守備的な戦術を敷いたモウリーニョ監督の采配を「ゴール前にバスを停車していた」とやゆしている。
この試合を含めたリーグ戦ラスト3試合を1勝1分け1敗と足踏みしたリバプールは、同3試合を3連勝で締めくくったシティに勝ち点2及ばず優勝を逃していた。結果的に、チェルシー戦で勝ち点3を手にしていればリバプールが栄光を手にしていただけに、“バス発言”からは、より一層、指揮官の無念が伝わるものとなった。手の届く位置に迫った自身初のタイトルの前には、偉大なる師の存在が立ちはだかったのだ。