「太極旗が上になくてはならない」 アジア大会制覇の韓国監督が日本戦で説いた“背水の覚悟”

U-23韓国代表のキム・ハクボム監督【写真:Getty Images】
U-23韓国代表のキム・ハクボム監督【写真:Getty Images】

キム・ハクボム監督が決勝の延長突入時に選手に訴えたのは“国を背負うプライド”

 アジア大会男子サッカー決勝で、U-21日本代表を下して2大会連続の金メダルを獲得したU-23韓国代表が、3日に帰国した。優勝という目標を達成したキム・ハクボム監督は仁川空港で韓国メディアに取材に応じ、「太極旗が上になくてはならない」とアジアナンバーワンへの思いを滲ませた。スポーツ・芸能総合サイト「OSEN」が伝えている。

 韓国はグループリーグ第2戦でマレーシアに1-2で敗れて敗退危機に直面するも、続く第3戦でキルギスを撃破。なんとか決勝トーナメントへの切符を手にすると、イラン、ウズベキスタン、ベトナムと破り、日本との決勝に駒を進めた。

 キム・ハクボム監督は、「大会期間で最もしんどかった試合は準々決勝のウズベキスタン戦」と4-3の壮絶な打ち合いとなった試合を挙げている。そして、日韓戦で90分を0-0のスコアレスドローとし、延長戦に入ってから選手たちにかけた言葉についても語った。

「特別なことはなく、一つだけ話した。日の丸の国旗が、我々の太極旗の上にのぼることだけはあってはならない。太極旗が上になくてはならない。私は目を開けて、その光景を見られない」

 国の威信を懸けて戦うことの重責について語り、選手たちの気持ちを引き締めたという。

 また、9ゴールで大会得点王に輝いたFWファン・ウィジョ(ガンバ大阪)を“コネ選出”と非難された心境についても吐露。「その部分については胸が痛かった。不信感が漂ってはいたが、心の中では『何事も正面突破しかない。それで解決するしかない』と強く思っていた。特別に話したことはなく、チームのために成績を残し、選手たちと力を合わせることで良い結果が生まれた」と話した。

 キム・ハクボム監督にとっても胃がキリキリするほどの決勝戦だったのは間違いなく、最後に選手たちに強調したのは、国を背負うプライドだった。ライバルである日本にだけは負けてはならないという背水の覚悟が、選手だけでなく指揮官にもあった。

(金 明昱 / Myung-wook Kim)

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金 明昱

1977年生まれ。大阪府出身の在日コリアン3世。新聞社記者、編集プロダクションなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めた後、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。2011年からは女子プロゴルフの取材も開始し、日韓の女子ゴルファーと親交を深める。現在はサッカー、ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。近著に『イ・ボミ 愛される力~日本人にいちばん愛される女性ゴルファーの行動哲学(メソッド)~』(光文社)。

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