「美しさはどこにもない」 U-21日本代表の“リアリスト”ぶりに英国人記者も感嘆
アジア大会16強でマレーシアに苦戦、終了間際のPKで薄氷の勝利
U-21日本代表は24日、インドネシアで開催されているアジア大会男子サッカーの決勝トーナメント1回戦でU-23マレーシア代表と対戦し、後半45分にFW上田綺世(法政大)が自ら得たPKを決めて、1-0で辛勝した。
これまでワールドカップを6大会取材し、“アジアサッカー情報通”としても知られる英国人ジャーナリスト、マイケル・チャーチ氏は16強の一戦を観戦。森保一監督の「心臓を止めかけた」と、一人のマレーシア人ストライカーを両チーム選手のなかで高く評価している。
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日本は圧倒的な時間、ボールを支配した。だが、ボール支配率の高さとは裏腹に、苦しみ抜いた。MF松本泰志(サンフレッチェ広島)とMF渡辺皓太(東京ヴェルディ)は、中盤でボールをコントロールした。だが、前半は特にマレーシアも粘り強い対応を見せた。突破の糸口を見出すことができず、両チームともに得点機会は乏しかった。
自陣に深く引いたマレーシアの前線には、違いを出せるタレントがいた。背番号11のFWサファウィ・ラシッドだ。マレーシアには素早く、相手のミスを見逃さない優秀なフィニッシャーがいた。決勝トーナメントに進出したマレーシアが数少ないチャンスを生かせるかは、彼の双肩にかかっていた。
日本も自陣に構え、ボール支配力を高めた。だが、FW前田大然(松本山雅FC)ら攻撃陣は、ペナルティーエリア内でクオリティーを示せなかった。決定機創出という部分では、カウンターを狙い続けたマレーシアも引けをとらなかった。
圧倒的な日本ペースだったが、カウンターの危機と隣り合わせだった。後半38分、森保監督の心臓は止まりかけたかもしれない。サファウィのシュートはポストを叩いた。サファウィのフリーランニングは、日本の守備陣に少なからず脅威を与えていた。サファウィのスピードとパワーは、この試合で際立っていた。
それでも、最終的には日本が勝った。DFドミニク ・タンが上田を倒して手にしたPK。上田は自信に満ちた態度でPKを成功させ、薄氷の勝利を手にした。美しさはどこにもない。フラストレーションばかりが募った。だが、日本は生き残った。それが最も重要なことだ。
[記者PROFILE]
マイケル・チャーチ。英「PA通信」のアジア支局長、AFC機関紙「フットボール・アジア」編集長を歴任。ワールドカップとアジアカップをそれぞれ6大会取材したスポーツジャーナリスト。かつては東京在住で、現在は香港に拠点を置き、アジアサッカーを20年間カバーしている。
(マイケル・チャーチ/Michael Church)
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。