「モウリーニョ解任」へ運命は動き始めたか マンUとの“最悪な相性”が生む疑念と確執
確実に低下しているユナイテッドファンの比率
モウリーニョは全く自分のスタイルを変えるつもりはない。それもそうだ。彼はそのやり方で、華々しい経歴を作ってきたのだから。
「俺のスタイルは知っているはずだ。それでポルト、チェルシー、インテル、レアル・マドリード、そしてまたチェルシーを優勝させたのだ」
とどのつまり、モウリーニョが手を替え品を替えマスコミに訴えているのは、そういうことだ。「俺は俺のやり方で勝ってきた。それを変える気持ちはない」と。しかしそのスタイルと、サー・アレックスの超攻撃的サッカーに心を奪われたサポーターの相性は、必ずしも良好ではない。優勝すればまだしも、それ以下では彼らは納得しないだろう。
しかも、同都市の宿敵シティはジョゼップ・グアルディオラ監督の緻密でスタイリッシュなシステムを2年目にして理解し、実践してゴールを量産。歴史的な勝ち点100での優勝を果たした。
こうした状況で、地元マンチェスター市内でも異変が起きているという。当地に在住のサッカーファンによると、かつては市内で圧倒的だったユナイテッドファンの比率が、確実に下落しているというのだ。しかも、子供のファンがシティに流れているという。
確かに昨季ルーニーが去って、かつての攻撃的なユナイテッドを象徴する選手が皆無となった。それを裏付けるように昨シーズンの総得点数は68。優勝したシティの106は別格にしても、4位リバプールの84、3位トットナムの74、また6位に沈んだアーセナルの74にも劣る。これでは地元の子供ファンが、ライバルのシティに流れるのも止められない。
結局モウリーニョの本領は、ポルトや50年間優勝がなかったチェルシー、またはインテルのようなクラブを率い、守備を基本に徹底的に統制して、ジャイアントキリングを起こす、というところにあるのではないだろうか。
2戦合計6-5でレアルがユナイテッドを破るという、壮絶かつ超攻撃的な結果に終わった対決に感動してチェルシーを買収したとされるオーナーのロマン・アブラモビッチ氏が、04-05シーズンからプレミアを2季連続で制したモウリーニョを解任したのは、その守備的スタイルが原因だったとされる。
レアルを去った理由も、スーパースター軍団に規律を強いるモウリーニョのスタイルが限界に達したというのが最も一般的だし、13年に出戻ったチェルシーもレアルに負けず劣らずのスーパースター軍団となっており、彼のやり方は3年目に崩壊した。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。