「モウリーニョ解任」へ運命は動き始めたか マンUとの“最悪な相性”が生む疑念と確執

ICCのリバプール戦に完敗。モウリーニョ監督は試合後に辛辣な言葉を並べた【写真:Getty Images】
ICCのリバプール戦に完敗。モウリーニョ監督は試合後に辛辣な言葉を並べた【写真:Getty Images】

英メディアのアンケートで示された衝撃の結果

 プレシーズンに欧州のビッグクラブが、アメリカやアジアで親善試合を行い莫大な副収入を得ることは今や常識だ。しかし、調整段階である以上、主軸となる選手が全て出場することはほとんどなく、出てもシーズン中のパフォーマンスからは程遠い状態だ。ましてやW杯イヤーの今年は、中心選手の休暇からの合流がさらに遅れて、いわゆるリザーブマッチ以下の面子で試合が行われるケースも多い。

 特にユナイテッドの主軸には、W杯3位決定戦まで進んだベルギー代表のFWロメル・ルカクとMFマルアン・フェライニ、イングランド代表のFWマーカス・ラッシュフォードとMFジェシー・リンガード、それに優勝国フランス代表のMFポール・ポグバがいて、看板選手の復帰が大幅に遅れていた。

 しかし、それでも「自分がファンならこんな試合に金を払って観に来ない」という発言はありえない。

 またリバプール戦に出場した若手選手を「キッズ」(子供)と呼び捨て、“全く使えない”という印象を与えるコメントをしてしまったことは、ライアン・ギグス、デイビッド・ベッカム、ポール・スコールズ、ギャリーとフィリップのネビル兄弟など、いわゆる「クラス91」と呼ばれるユース生え抜き選手によって、1990年代から2000年代にかけての黄金期を築いたことを誇りとするユナイテッドファンを少なからず当惑させ、怒らせた。

 それに加え、希望通りに補強が進んでいないという発言は、クラブの最高経営責任者(CEO)を務めるエド・ウッドワードとの関係に良い影響を与えるはずがない。

 気の早い英タブロイド紙のなかには、「モウリーニョはすでにマンチェスター・ユナイテッドに嫌気がさしている」「もう次が決まっていて、解任を促進させようと目論んでいる」といった内容の記事さえ出現した。

 さらに英公共放送「BBC」電子版は、こうした異例の発言を連発したモウリーニョに対し、「今季いっぱい、マンチェスター・ユナイテッドの監督でいられるか?」というアンケートを実施。すると、なんと85%もの読者が「今季いっぱい持たない」との見解を示した。

 こうしてモウリーニョに関する報道がエスカレートしたプレミアリーグ開幕直前、闘将の怒りの矛先は自然とメディアに向けられた。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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