森保ジャパン“3-4-2-1”の落とし穴 アジア大会初戦で与えた「日本対策」のヒント

第1戦では格下ネパールに1-0と辛勝に終わった日本【写真:AP】
第1戦では格下ネパールに1-0と辛勝に終わった日本【写真:AP】

初戦で格下ネパールに1-0と辛勝、大苦戦した3-6-1の守備ブロック

 インドネシアで開催されているアジア大会に参戦中のU-21日本代表は、グループリーグ2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。

 14日に行われた第1戦では、U-23ネパール代表を1-0で下した。ほとんど集まってすぐの状態で迎えた大会初戦だから、内容的にはこんなものとも言えるが、ネパールの6-3-1の守備ブロックをなかなか崩せなかったのには既視感がある。

 五輪代表とA代表を兼任する森保一監督は、二つのチームのコンセプトを共通のものにするという。もちろん、そうでないと兼任する意味もない。フォーメーションは3-4-2-1、いわゆる「ミシャ式」である。森保監督がサンフレッチェ広島を率いてJ1優勝を成し遂げたのもこの形だった。

 広島での前任者だったミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現・北海道コンサドーレ札幌)が始めたミシャ式は、攻撃と守備で立ち位置が変わる可変式のシステムだ。今では珍しくなくなったが、やり始めた当時、対戦チームは相当面食らっていたものだ。“ミシャ”監督が率いる浦和レッズと森保監督の広島、二つのチームが同じシステムを用いて覇を競った時期もあった。

 ただ、現在ミシャ式を採用しているのは本家のペトロヴィッチ監督が率いる札幌ぐらいで、広島はすでに違うシステムに変わっている。また、あれだけ猛威を振るったシステムであるにもかかわらず、浦和と広島以外には浸透しなかった。

 長く続けるうちにミシャ式への対策も様々出てきた。そのなかでも標準的と言えるのが、3-6-1の守備ブロックである。ネパールが日本戦で採用したのもこの対策だった。同国を率いたのが日本人の行徳浩二監督だったことも関係しているかもしれない。

 ミシャ式は攻撃時にはウイングバックが高い位置へ出て5トップのようになる。中盤は空洞化させ、そこへ2シャドーが下りてきてバイタルエリアで受けるか、対角のロングパスでサイドへ展開というのが主要パターンになっている。ところが、6バックで幅を埋められてしまうとサイドが使えない。4バックと3人のMFで固めている中央部も固い。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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