西村判定の波紋 日本人主審のPK判定で浮き彫りになった、世界2大サッカー文化の激烈な相違点

浮き彫りになった相違点

 

 しかし、あれは明らかにフレッジのダイブだったという側面もあり、同じ日本人としては、西村主審にはそこを見破って、審判としてもうひとつ上のレベルを示してほしかったという思いはある。

 基本的にPKや一発退場といった、試合の流れを決定的に決める判定は、試合後両軍が納得できるものが理想だ。

 もちろんそれはあくまで理想なのは分かっているが、W杯のような過激なまでのナショナリズムと愛と期待、そして場合によっては怒りも渦巻く大会で、後に論争が起こるような判定は問題があるといっていいだろう。

 とくに今回の判定は、イングランドをはじめとするフィジカル派の欧州強豪国を刺激した。ただでさえ南アメリカ有利と言われる中、あのような判定が起きれば、これが今回の判定基準になってはたまらないから、ヒステリックといっていいほど過剰に反応した。

 世界に一歩、足を踏み出すと、そこにはさまざまなサッカー文化が存在し、それぞれが「われわれこそ世界一」と、強烈に主張する。

 今回の西村判定は、そうしたサッカー文化の中でも、世界2大文化と呼べる、「勝利至上主義の中、欺瞞(ぎまん)も技」というラテンヨーロッパ、及び南アメリカと、「質実剛健なる男と男の戦い」という北ヨーロッパの、激烈ともいえる相違点が浮き彫りになったという点で、非常に興味深いものにはなった。

【了】

森昌利●文 text by Masatoshi Mori

 ※ワールドカップ期間中、サッカーマガジンゾーンウェブが記事内で扱うシーンやデータの一部はFIFAワールドカップ?公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』で確認できます。
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