米本が5年半ぶりに代表復帰 2度の大けがを乗り越えた男のある思い
辛苦のサッカー人生
「本当にサッカーが好き。サッカーができることが当たり前だと思ってきたけど、本当はそうじゃないとけがしたことで気づけた。たくさんの人に支えられてきたし、その人たちのためにもと、今は思える」
この純度の高い言葉を吐き出す男が、再び日の丸に袖を通す。
FC東京のMF米本拓司は23日、2010年1月のアジア杯予選のイエメン戦以来となる日本代表に復帰を果たした。この日のチームの練習後、「代表に戻ることができてうれしい。今まで支えてくれた方々に感謝したい」と喜びを語った。
プロ1年目の09年、東京の5年ぶり2度目のヤマザキナビスコ杯制覇の原動 力となり、そのシーズン終了後には日本代表へと初選出された。この若干19歳のダイナモには、その後、希望に満ちた将来が待っているはずだった。
だが、その先に待っていたのは、2度の大けがだった。2010年、11年に、左前十字靱帯(じんたい)を損傷。左ひざにメスを入れる度に、何度も心が折れかけた。
しかし、その度に支えてくれる人の温かさを知り、サッカーの楽しさを再認識してきたという。だからこそ、こう言葉にする。
「2度、前十字を切ったけど、最近はだんだん自分が思うプレーができるようになってきた。同じようにけがで苦しんでいる人たちのためにも、自分がけがしてもこうやって(代表に)戻ってこれることを証明したい」
けがを乗り越える度に、その言葉は 純度を増してきた。「サッカーが好き」。5年半の月日の中で、彼は体いっぱいでそれを表現してきた。米本は、大きな壁を乗り越えた男の強さを証明するために、代表のピッチへと帰ってくる。
「オレも大人になったんですよ。もう24ですから」
そう言うと、米本の白い歯がこぼれた。艱難(かんなん)辛苦のサッカー人生を乗り越えた男は今、再び希望に満ちたキャリアを歩もうとしている。
【了】
馬場康平●文 text by Kohei Baba
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
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