Jリーガーに「オフあり」、高校生に「オフなし」 国際的に異例で不合理な部活の現状

旧来の“量依存型”の発想から脱却を…

 まだ身体ができ上がっていない育成年代ほど心身の無理を強いるのは日本スポーツ界の通弊で、かつてはプロ野球でも新入団してきた選手たちから「高校時代に比べて随分と練習が楽になった」という声が漏れていた。日本スポーツ振興会の調査では、1975年以降に部活中に熱中症で亡くなった選手たちの4分の1が野球だというが、盲目的に「練習量が結果に直結する」という考え方は、皮肉にも本来速筋の強化が必要な野球を軸としていた。

 野球の世界でも、本場アメリカの指導者たちは、高校生が延々とランニングを行う日本の指導に首を傾げているそうだが、さらに広い世界と競うサッカーは早急に旧来の“量依存型”の発想から脱却する必要がある。無茶を克服した選手ばかりが生き残るのではなく、育成年代こそ合理的で無理のないトレーニングを重ね、専門競技に限らず人間的にも幅を広げることも視野に入れるべき時期が来ている。

 欧州では、夏は一切の活動を休むことで、オンオフのメリハリをつけている。日本でもプロの選手たちは、基本的にリーグと天皇杯を終えればオフに入る。大人にオフがあるのに、学生にオフがない。それは物凄く不合理で奇異なことである。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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