ザックJAPAN 攻め勝つサッカーの美学を取り戻せ
まるでデジャブゥだった。その数時間前、リードしていたウルグアイがコスタリカに逆転を許すと、その4分後に逆転弾を浴び、1-3で敗れた。ウルグアイしかり、スペインしかり、今大会の負けパターンを踏襲するように日本も敗れたのだ。
「左サイドが狙われていた」
逆転された直後、交代で入った大久保嘉人は、ベンチでそう見ていたという。
左サイドは、長友佑都、香川真司が陣取り、日本のストロングポイントになっている。波に乗った時は爆発的な攻撃力を発揮する。だが、実は日本を研究すれば、左サイドは守備に問題を抱えた弱点であることが容易に分かってしまう。高い位置を取る長友の背後には広大なスペースがあり、香川の守備は信じられないほど軽い。つまり、左サイドはもろ刃の剣なのだ。
そこを徹底して突かれた。だが、失点はある程度、想定内だったはずだ。かねてからザッケローニ監督も「1点取られてもそれ以上取って勝てばいい」と言ってきた。点を取られても取り返して勝てばいいというのが、このチームのコンセプトなのだ。しかし、逆転されて意気消沈し、ほとんどチャンスをつくれなかった。
最大の問題はここにある—。
攻撃を志向するチームなのに、攻め切れない。それは、このチームを根底から揺るがす事態に陥りかねない。岡崎慎司は、渋い顔で言った。
「中盤でのミスが多かったし、みんな、一人ひとりの距離が遠かった。攻めあぐねてしまい、なかなか自分たちの思うようなサッカーができなかった」
1点を守り切るサッカーを掲げてきたわけではない。だが、ときには状況に応じて全員が守備の意識を持つことも必要だ。ただし、その際、大切になるのは攻撃するためにボールを奪うという意識だ。オランダもただ引くのではなく、積極的にプレスをかけてボールを奪い、スペインを沈めた。主導権を握ることばかりにとらわれていると、勝負の本質を見誤ることになってしまう。ボールを支配するのでなく、ゴールを常に奪うというところから答えを逆算しなければならない。そして、岡崎はさらに続けた。
「ここで自分たちのサッカーを諦めるわけにはいかない。次(ギリシャ戦)が最後という気持ちでやる。もう1度、意思統一して攻撃的なサッカーで勝つしかない」
ギリシャはコロンビアに負け、日本と同じく背水の陣で挑んでくるだろう。そこで、再び本来の攻撃的なサッカーを貫いて闘えるか。ギリシャ戦は、南アフリカW杯からの4年間かけたチームづくりの是非が問われる試合になるだろう。
【了】
佐藤 俊●文 text by Shun Sato
※ワールドカップ期間中、サッカーマガジンゾーンウェブが記事内で扱うシーンやデータの一部はFIFAワールドカップ?公式動画配信サイト&アプリ『LEGENDS STADIUM』で確認できます。
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