「70億分の1の“何者”かになる」 J2徳島のプロサッカー選手、井筒陸也の生き方
本当に発信すべきは「僕のようなサッカー選手」
――多くのサッカー選手がいるなかで、全員を一括りにはできず、それぞれのレベルや立ち位置によって見えている世界は変わると思います。そうなれば、自ずと発信できる内容も変わってきますよね。
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「本田圭佑選手など、トップ選手の言葉って抽象度がすごく高い。だからそれを聞いた人が自分事としてなかなか受け入れられない部分があるんです。身近ではなく、それこそ坂本龍馬など偉人の名言と同じようなものに思えてしまいます。これは本当に重要な部分です。それは彼らだからこそ言えることで素晴らしいことを言っていますし、すごく貴重で影響力もありますが、それをみんなが素直に受け取れるかといえば、そうではない。
それよりも、身近なメンターから言われた言葉の方が自分の人生に大きな影響を与えたりする。僕なんかはむしろ、そういう立ち位置なのかなと思っていますね。マスに届くのは本田選手のように影響力がある人の言葉だけど、逆に僕のような選手だからこそ伝えられることもあるはずです」
――同じJリーガーのなかでも、井筒選手の考え方に共感している選手が増えてきているようですね。サガン鳥栖の小林祐三選手は、ご自身のツイッターで「僕は井筒選手が好きだ」と投稿しているのを見かけました。
「そうですね。少しずつですが、そうやって感度の高い選手がフォローしてくださっています。先日は浦和レッズの武藤雄樹選手もフォローしてくれました。面白いと思ってくれている人も少なからずいるみたいです」
――井筒選手のブログ「敗北のスポーツ学」では、最初の投稿からスポーツにおける「『結果がすべて 』なんて大嘘」と、かなり刺激的な内容でしたよね。話題になったということでネガティブな批判もあったようですが、それは想定されていましたか?
「それは十分に想定した上でやっています。やった上で、実際はもっと想定しておかなければいけないこともたくさんありました。ファンの方にも、不快な思いをさせたら申し訳ないと思う部分もたくさんありますが、批判の声にはしっかりと向き合ってやっています」
――スポーツ選手は特に競技以外の露出が増えると、反発されることがありますね。
「それでも『サッカーに集中しろ』という批判を気にしていたらキリがないこともあります。周囲を納得させるくらいの結果や実績を残してから言えよっていう声もありますけど、どんな選手でもバッシングは避けられません。
トップ選手は知名度も影響力もあるので、いろいろなやりたいことができますよね。でも、本当に発信をしていかなきゃいけないのは、僕のようにサッカーで“結果を出しているわけではない”側の選手だと思うんです。今みたいな時代だったら、“サッカーが上手い選手”と“サッカーが上手くてなおかつ発信もしている選手”だったら、絶対に後者の方がいいと純粋に思うんです」