「ジャパンズウェイ」の言葉に宿る“魔力” 過去4年の日本代表強化「失敗」の検証は?

(左から)アギーレ氏、ハリルホジッチ氏、西野氏【写真:Getty Images & 田口有史】
(左から)アギーレ氏、ハリルホジッチ氏、西野氏【写真:Getty Images & 田口有史】

森保新監督の就任会見で繰り返された二つの言葉

 予想通りの代表監督就任会見になった。

 日本代表新監督はスポンサーへの感謝の言葉を連ね、ロシア・ワールドカップ(W杯)でチームを成功に導いた日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は、2009年の小野剛技術委員長時代に掲げられたという「ジャパンズウェイ」という言葉を取り上げ、以後真摯に努力を積み上げてきたことを強調し、会見は一見滞りなく終了した。

 確かにJFAは大きなギャンブルに勝利した。批判が渦巻き、明らかに逆風の中で下した決断が、想像を超えて「吉」と出た。この機会に、何かと批判的に見られがちなJFAが、どんなことを実践してきたかを伝えるのも、大切な広報活動である。

 だが総括の場が、肯定的な出来事を連ねた祝賀ムード一色に染まるのは、特に将来を睨めば好ましいことではない。1998年フランス大会以降、W杯に6大会連続出場し、その半分の3度でグループリーグ突破という成績は、日本の置かれた状況を考えれば快挙に近い。失敗の反省も含めて、多様な経験が現在につながっていることも間違いない。

 しかし反面、2014年ブラジルW杯以降の技術委員会の仕事ぶりが失敗だったのは厳然たる事実である。土壇場の帳尻合わせで結果がついてきたのは望外の出来事で、今、未来に向けて焦点を当てなければいけないのは、失敗だったプロセスの方だ。

 技術委員会を主導した「原博実-霜田正浩」体制では、どんな強化プランが描かれ、どういう基準で日本代表監督を招聘したのか。さらにバヒド・ハリルホジッチ監督の就任後に、指針を定めるべき技術委員長が代わり、最終的には西野朗技術委員長が代表監督を務めるわけだが、指揮官としての西野氏の手腕が卓越していたとしても、本来の前職への反省はあって然るべきで、とりわけ技術委員会の代表監督への評価とサポートが十全でなかったのは明白だ。

 そして公益財団法人の長には、ハリルホジッチ元監督を契約解除にした明快な理由をファンに対しても開示し、それを教訓としていく責務がある。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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