新生「森保ジャパン」戦術考察 “選手ありき”のチーム作り、重用されてきた人材は?
森保監督はこれまで「選手ありき」のチーム作りを主体に考えてきたが…
「システムありき」ではなく「選手ありき」のチーム作りを主体に考える森保監督にとって、一つのやり方で栄光を勝ち獲った後のチーム運営は難しかったはずである。予算がJ1平均規模にある広島では、個人で試合を決めることができる特別な選手を獲得することが難しい。2016年、FWピーター・ウタカ(現・徳島ヴォルティス)を獲得して個人能力で得点を重ねたものの、彼がコンディションを落とすとチームのパフォーマンスが落ちてしまった現実もある。一方で戦術的な改革を施すためには選手の入れ替えも必要とするが、そこは財政的にもクラブの方向性にしても厳しい。
ただ、そういう環境で四苦八苦してきた経験は、日本代表を率いるうえで大きなアドバンテージとなる。日本にはFWリオネル・メッシもFWクリスティアーノ・ロナウドもFWズラタン・イブラヒモビッチもいない。若手にもFWキリアン・ムバッペのような“破壊王”はいないのだ。どういう監督であれ、日本を強化するためには組織を強くすることが大前提。アルゼンチンのような個人に頼った戦術は採れない。優秀な選手はいるがスーパースターはいないという意味で、世界における日本代表はJリーグにおける広島のような立場だ。だからこそ、広島で苦闘しながら結果を出した経験は十分に代表のチーム作りに生かされると見る。
では、具体的にどういう戦術が採られ、どういう選手が選択されるのだろうか。正直に言えば、分からない。前述したように、森保監督は「選手ありき」の戦術を採用するタイプで、日本の才能を最大限に生かすためには違うやり方を模索する可能性もある。ただここでは、広島で採用した戦術をそのまま代表に移植することを前提に、あえて広島の選手を外して選択肢を考える。
守備陣に対してはペトロヴィッチ監督ほどの攻撃性を求めない。彼が重用したストッパーは水本裕貴と塩谷司(現アル・アイン)だ。ともに高さに強く、スピードもある。1対1も強くて、ボールを取れるスキルもある。二人とも共通して言えるのは、外国人アタッカーに対しても臆することなく戦いを挑める強いメンタリティーを持っている。一方で足下の技術も確かで、縦パスの精度も高い。特に塩谷はボールを持ち上がることができるし、シュート力も強烈だった。甲府から獲得したDF佐々木翔も塩谷に近い特徴を持っていることを考えても、そういうタイプを指揮官は求めるだろう。