日本代表新監督「森保一」の“人間力” 孤独な世界を生き抜く3つの資質とは?
周りは成功を祈念し、それが森保監督の力となる
トップに立つ人間にとって最も必要な力は決断力である。情報を集めて分析することに長けていても、戦術構築が優れた人であっても、トレーニングプランを数多く持っている人であっても、それだけでは監督にはなれない。極端な話、そういう能力を持っていなくてもいいのだ。
そういう力を持っているスタッフを集め、彼らから信頼される人間性と、彼らから上がってくる情報を集約しつつ、孤独のなかで方向を決める決断力。軍事的に優れた才能を決して持っていなかったと言われる西郷隆盛や東郷平八郎がどうして名将たりえたか。それはこの二つの力を彼らが持っていたからであり、西岡アナウンサーも森保の中にそういう力を見ていたからこそ、「監督として成功する」と語った。そしてその言葉の正しさは、結果を以て証明されている。
「監督として生きていける人は限られている」
西岡は森保が広島の監督に就任した際、こう語った。
「例えば岡田武史さんは監督経験もなかったのに、いきなり日本代表監督に就任して、ワールドカップ初出場を果たした。その後、札幌、横浜FMでも成功し、また日本代表監督になってベスト16進出。戦術どうこうもさることながら、岡田さんは勝ち運を持っているんです。森保も、そういう運を持っている人間だと思うんですよ。全く無名の存在だったのに、オフトと出会って日本代表になる。新潟でコーチを経験したことも、監督業にとっては結果的にプラスになるはず。努力している人はたくさんいるが、努力しているからといって監督として成功するとは限らない。森保は、監督にとって必要な『運』を持っていると思います」
2017年12月下旬、筆者が森保と再会した時の彼の第一声は「広島残留、おめでとうございます!」だった。
志半ばの退任だったが、彼は一切、言い訳がましいことも言わず、「広島には感謝の気持ちしかない。自分がチームの変化を上手く把握できておらず、そこに対する働きかけが足りなかった」と素直に語ってくれた。
そんな彼だからこそ、周りは成功を祈念する。そしてその思いが、巡り巡って、本人に力を与える。「森保一」は、そういう不思議な力を持っている男なのである。(文中敬称略)
(中野和也 / Kazuya Nakano)