オランダに大敗したスペインが「人生最悪の試合」を招いた2つの弱点
2つ目の弱点『見過ごされてきた守護神の不安定さ』
スペインのもう一つの弱点であり、最大のアキレス腱はカシージャスの不安定さにあった。これは結果論ではなく、彼のハイボールの処理のまずさ、足下のボールの処理の悪さは長年見過ごされてきた課題であり、これまでは若さと持って生まれた運動能力による反応の早さでその弱みを上手くごまかしてきた。それが昨季はモウリーニョ、今季はアンチェロッティに見抜かれたことでレアル・マドリードでの正GKの座を失い、試合勘と自信の喪失が結果としてパフォーマンスの著しい低下を招いている。FKからのデフライの3点目、72分のファン・ペルシの4点目はカシージャスの弱点を完璧にインプットしていたオランダの戦略が呼び込んだ追加点だったという見方もできよう。
80分にはロッベンの高速ドリブルからの5点目が決まり、スペインは完全に戦意喪失の状態。試合後、スペインの選手たちからは「サッカー人生で最悪の試合」という言葉が口々に飛び出したが、スペインにとってはまさに「悪夢」とも呼べる初戦で逆にオランダにとっては全てが面白いように“はまった”試合。前回大会の初戦もスイス相手に黒星発進のスペインは「黒星発進のチームは優勝できない」というジンクスを覆す形で優勝してみせたが、このオランダ戦の敗戦は単なる負けではなく、精神的ダメージの大きすぎる歴史的かつ屈辱的な大敗だけに連覇に向けた視界はかなり不良になったと言わざるを得ない。
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小澤一郎●文 text by Ichiro Ozawa
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