なでしこの涙を無駄にしない 日本サッカー協会が環境改善を約束

野田女子委員長「ともしびを消さないよう、選手の涙を無駄にしないように」

 7日、女子ワールドカップカナダ大会準優勝を飾ったなでしこジャパンが千葉県内で記者会見を行い、日本サッカー協会女子委員会の野田朱美委員長はプロ選手の少ない日本女子サッカー界のプレー環境改善に乗り出す方針を明らかにした。
 「本日カナダより全員無事に帰国しました。成績は準優勝です。キャプテンはとても責任感が強いので、決勝の後に申し訳ないと口にしましたが一丸となって戦いました」
 日本代表として76試合24得点と記録を誇る野田委員長は決勝戦で2-5惨敗の責任を一身に背負った、同席したキャプテンの宮間あや(岡山湯郷)に労いの言葉を掛けた。そして、「現地での応援に日本からたくさんの方が駆けつけてくれました。1ヵ月以上にわたり、なでしこを応援してくれたすべての方にお礼を言います」と感謝の言葉を述べた。
 「このともしびを消さないよう、選手の涙を無駄にしないよう、しっかり考えます」と力説。女子サッカー全体の環境改善へ取り組んでいく考えを明らかにした
 なでしこは2011年ドイツ大会から翌年のロンドン五輪、そして今大会と3大会連続で決勝に進出するという偉業を達成した
 「2011年の前から海外に選手が行って、海外でプレーすることをサポートしました。基本的には、選手一人一人の意識が高かったのがバックグラウンドです。今の日本のスタイルは世界で高く評価されていて、それを貫きました」
 野田委員長はチームの残した実績と選手の意識を高く評価している。課題として捉えているのは、環境面だ。日本協会は「なでしこ海外強化指定選手」という制度を立ち上げ、海外でプレーする選手に対してシーズン中の生活費を支援している。しかし、国内のなでしこリーグでプレーする選手のうち、プロ契約を結んでいるのはほんの一握りだ。今大会のなでしこジャパンのメンバーでも、昼間に別の仕事をして生活費を稼ぎ、アマチュア契約としてプレーする選手が少なくない。そして、海外でのプレーを視野に入れたとしても、待遇面で難しい状況にあるのも事実だ。
 「環境のところは、少しだけど良くなっています。チーム数が増えたり、待遇が上がってもいます。ただ、選手が感じていないということは、まだまだ足りない。せっかく出した結果に応えられるような施策に真剣に取り組みます。環境面は育成面の受け皿です。選手たちがやってくれたことに対する報いを、形にしたい」
 以前から、なでしこジャパンの強化試合の日程や試合数、対戦相手についても、アメリカ代表やドイツ代表のそれに及んでいないと指摘されていた。キャプテンの宮間も「もう少し(代表活動の)時間が増えたり、試合をこなせたら違う経験だったり結果になった」と語った。代表が活動する時間を確保する必要性を説いた。
 国内の女子サッカー環境の整備、選手たちの待遇改善、代表強化のための施策と課題は山積みだが、中学生時代から日本代表に選抜されて長らく日本女子サッカーを支えてきた野田委員長の手腕に期待が掛かる。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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