日本人はチリ代表FWサンチェスを目指せ! 身長170センチの体に潜む“違い”とは?
意識すべきトレーニングコンセプト
ちなみに、樋口さんは育成年代の選手の指導にも力を入れている。サンチェスのような体を作るうえで大切なトレーニングについても話を聞くと、明確なコンセプトを持っており、それは3つの要素に分かれている。
「一つ目は一番の基礎とも言える部分で、関節の可動域の確保です。パフォーマンスを上げるにはまず関節の可動性が必要で、これがトレーニングピラミッドの底辺にあるものです。二つ目は支持性・安定性が必要な関節の周りにある筋肉を鍛えること。三つ目は体の外側にある大きな筋肉を鍛え、パフォーマンスを高めるというこの三要素です」
可動域が必要な関節は胸椎、股関節、足関節(足首)。反対に安定性が求められるのは腰椎という、いわゆる体幹に含まれる部分と肩甲骨周辺の肩甲帯。そして最後に鍛えるべき大きな筋肉というのは、前述した広背筋、大殿筋、ハムストリングが代表的なものだ。
「これらを順番に一つずつ鍛えていくとしたら相当な時間がかかってしまいますが、育成年代から始めていけば確実に積み上げていくことができます」
こうしたコンセプトに基づいた体づくりは、当然育成年代から取り組むべき課題だが、実際に徹底した管理がなされているかと言われればそうではない。高校生年代の選手も指導する樋口さんによれば、名門校と呼ばれる学校でも十分なトレーニングが行われていないという。
「体を作る上での地図を描けていない。よく言われる例えで、『地図を持たずに富士山を上るようなものだ』と。地図を持っていれば最短のルートで上ることができるのに、今の育成年代の子たちは地図を持たずに闇雲に進んでいる子どもが多い。行き当たりばったりで富士山を登ろうとしては、結局頂上には辿り着けないですよね。鍛えるうえで、まずは地図を描けるかどうかというのは重要です。僕のようなトレーナーとしては、そういう部分を教えることができるかが“質”と言えますね。知っていれば応えられる。知らなければ何も言えないですから」
理想の体づくりのためには、トレーニングのメソッドはもちろん、栄養バランスを考えた食事も摂らなければいけないことは言うまでもないことだ。アスリートの体づくりに、本屋に並ぶような「1週間で○○」、「これだけやればOK」というような方法はどこにもなく、日々の積み重ねが重要となる。
日本からサンチェスのような理想的な体型の選手は生まれるのか。そのためには、育成年代から正しい知識を取り入れていかなければならないことは間違いない。
<Profile>
樋口敦(ひぐち・あつし)
理学療法士、元ファジアーノ岡山トレーナー。現在は独立し、サッカー選手のトレーナーや「全てのビジネスマンをアスリート化する」をコンセプトにボディメイクやコンディショニングにも従事。SNSを通じて多くの高校生年代から指導依頼も受けている。
ブログ:https://note.mu/sixpackproject ツイッターアカウント:@1983physio
(石川 遼 / Ryo Ishikawa)