日本人はチリ代表FWサンチェスを目指せ! 身長170センチの体に潜む“違い”とは?
【フィジカル的視点で見るサッカー論】理学療法士の樋口氏が提言「屈筋優位の体を改めよ」
J2ファジアーノ岡山の元トレーナーで、現在はパーソナルトレーナーとしても活動している理学療法士の樋口敦氏。SNSなどを通じて、日々サッカー選手の体づくりについての情報発信を精力的に行っている。
ジュビロ磐田のFW川又堅碁のトレーナーも務める樋口氏は、日本人選手がモデルケースとすべき選手としてマンチェスター・ユナイテッドのチリ代表FWアレクシス・サンチェスの名前を挙げている。
その真意は、果たしてどこにあるのか。樋口氏に話を訊いた。
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トレーナーとして選手の体づくりを研究している樋口氏。「良い選手か悪い選手かを判断するためには、まず筋肉のボリュームを見る」と話す。特に重要視するのは体の後ろ側にある筋肉、つまりは伸筋の部分だという。比較して見ると、海外のトップ選手と日本人選手の違いは一目瞭然だという。
「僕が重要だと考えているのは広背筋、大臀筋、ハムストリングスです。反対にその拮抗筋にあたる体の前の筋肉(屈筋)はつき過ぎていない方がいいんです。大胸筋、腹直筋、大腿四頭筋が優位になりすぎないようにすべきです」
伸筋とは、文字通り体を伸ばす時に働く筋肉のこと。人が立つ時にはこの伸筋が働き、屈筋は体を曲げる時に働く。大胸筋や腹直筋などは目に見えて分かりやすく、一般的に筋トレというと、このあたりの筋肉を鍛えるイメージを持つ人が多いかもしれない。
しかし、サッカー選手は格闘家やラグビー選手のように丸太のごとく太い腕や、ぶっくりと膨れ上がった胸の筋肉は必要ない。「全くないのはもちろんダメですが」と前置きしたうえで、「サッカー選手のように長い時間動き続ける有酸素能力と、スプリントのような瞬発的な能力の両方が求められる場合は、鍛えるすぎる必要はありません」と樋口さんは強調する。
屈筋に比べると、伸筋の方が持久力に優れているということも関係している。屈筋優位の体になると、持久力の低い疲れやすい体になる。サッカーが90分という長い時間動き続ける必要があることを考えると、理解しやすいはずだ。
また、サッカー選手の負傷で多く聞かれるグロインペイン症候群も、恥骨や鼠径部周りの屈筋を酷使することによって痛みが生じているものだ。