日本サッカーと繰り返された“悲劇” 25年の時を経た「判断力」の教訓は生きるのか
岡田氏が繰り返した「勝負の神様は細部に宿る」の真意
同じことはセネガル戦の1失点目にも当てはまる。右クロスを原口はバックヘッドでクリアしたが、これがDFユスフ・サバリに渡り、彼のシュートがGK川島のパンチングミスを誘ってFWサディオ・マネの先制点に結びついた。この原口のプレーも乾同様、CKに逃れてプレーを切っていれば失点を防げたかもしれない。
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原口も乾も1対1では身体をぶつけ、時には反則覚悟で対戦相手の突破を阻んでいた。しかしゴール前では「セーフティーファースト」という守備の基本を実践することができずに、失点のきっかけとなった。もしかしたら、それだけ相手の圧力に余裕を失っていたのかもしれない。
かつて日本を2010年南アフリカW杯でベスト16に導いた岡田武史元監督は、「勝負の神様は細部に宿る」と表現した。
岡田氏によると、「“まぁいいか”、“これぐらいで大丈夫だろう”と気を抜いたために、運をつかみ損ね、W杯へ行けなくなった。そんなふうに運をつかみ損ねたくなかったら、どんな小さいこともキチッとやれ」というのが、この言葉の真意である。
何気ないプレーにもいかに気を配り、細心の注意を払えるか。
そうした意味ではベルギー戦のアディショナルタイムでのMF本田圭佑の左CKも、彼にしては配慮が足りなかった。ベルギーGKティボー・クルトワは2メートル近い長身選手で、ハイボールには絶対の自信を持っている。そんな彼と空中戦で競れる日本人選手はいない。あの場面ではショートコーナーで時間を使うか、ニアへの速いクロスでCKを誘発すべきだった。
ポーランド戦の終盤は時間稼ぎのボール回しに批判も出たが、しっかりと0-1で逃げ切ってベスト16進出を決めた。やっと1993年アメリカW杯アジア最終予選で、終了間際の失点で本大会出場権を逃した“ドーハの悲劇”の教訓が生きたのかと思ったのも束の間、ベルギー戦では残り1分を持ちこたえられずに悲劇は繰り返された。
六川 亨
1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。