なでしこの次期エースに 岩渕が泣き腫らした目で誓うリオでのリベンジ
23人の一人から中心に
決勝の舞台でも、キックオフの笛はベンチで聞くことになった。そして、交代出場で2011年ドイツ大会とロンドン五輪に続く世界大会決勝のピッチへ。 「4年前とか3年前に比べたら、自分のプレーを出そうという姿勢は見せられたと思います」と語ったように、相手の逆を突く細かいボールタッチで攻撃のアクセントになった。それでも、最後はアメリカDFに体を寄せられてピッチに倒れ込んだ。
今大会を戦ったなでしこジャパンを「本当に、この23人で戦うのは最後ですけれど、本当にいいチームだったなと思います」と岩渕は振り返った。FW安藤梢(フランクフルト)が1次リーグ初戦のスイス戦で左足骨折の重傷を負い、帰国して手術を受けることが決まった。その後、チームのベンチには安藤の背番号7のユニホームを着た白いクマがいた。選手たちがピッチに姿を現すとき、そのクマを大事そうに抱きかかえていたのが岩渕だった。リハビリを経て大会へ の出場をかなえただけに、負傷してしまった安藤の思いが身に染みた。
「あんちをもう1度バンクーバー」にという全員の思いを胸に、岩渕も、チームを決勝に導く活躍を見せてきた。その決勝戦では、安藤をGK山根恵里奈がおんぶする横で、岩渕は白いクマを抱きかかえて笑顔でピッチに入ってきた。最後まで、本当の意味で23人全員で戦ったチームだった。
岩渕は「結果が準優勝だったけど、悔いのない大会だった」と泣きはらした目で語った。そして、その視線は先を見据える。来年のリオデジャネイロ五輪でリベンジを懸けて戦うために、まずはアジア予選を突破しなくてはならない。今大会、アジア勢は日本、オーストラリア、中国の3か国が8強に進出した。五輪本戦のアジアからの出場枠は2 つだ。厳しい予選が待ち受ける。
「アジアから2チームは絶対に厳しい。難しくなるのは間違いないので、どういう状況になっても戦えるチームになりたい」
メンバー中で最年少の岩渕は、みんなの妹のように見えた。だが、次世代を担う存在としては、いつまでも背中に隠れているわけにはいかない。アルゼンチンの伝説の英雄にちなんで「マナドーナ」の愛称を持つ岩渕が、名実ともにチームの中心に君臨して次世代なでしこのエースとなる。
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サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images